ニーヴ・ポーと怪しい依頼人

作者:中田かなた

【『嘘つき少年の異世界謀略ゲーム ~異世界で領主に成り上がった少女を連れ戻します~』新シリーズ開始記念特別短編2本目!!】
ニーヴ・ポーと怪しい依頼人

 ニーヴ・ポーは探偵少女である。その鋭い観察眼により、数々の事件を解決に導いてきた。
 そんなニーヴを訪ねてきたのは、一人の男だった。黒いローブに身を包んでおり、見るからに怪しい風貌をしている。顔も隠れており、詳しい素性は分からない。だが、腕のところに堅いものを装着しているのが服越しにも分かった。おそらく、邪魔族が使う魔法腕輪だろう。

「ようこそいらっしゃいました。私が探偵のニーヴ・ポーです」
「私は『とある組織』に所属する者だ。私の名は、スヌーズという」
「分かりました。では、スヌーズさん。本日はどのようなご依頼でしょう?」
「探偵である君に、ある書物を探してほしい。我々が『禁書』と呼ぶ物だ。アレは我々が厳重に保管していたはずなのだが、三年前に何者かによって盗まれてしまったのだ。あれは、我々の組織をして『最高傑作』と呼ばしめるほどの物だ。条件を備えた者が読めば、すさまじい規模と威力の魔法効果が生まれることになる」
「その魔法の起動ワードとして、その『禁書』に書かれている文言を使ったというわけですね?」
「正確に言えば『禁書』全てだ。つまり、この魔法を使うためには、天才と呼ばれるほどの才能を持つ者が、この魔法を起動させるために必要な魔法腕輪を身につけた上で、見つけることすら困難な『禁書』をまるまる一冊朗読しなければならないのだ。だから、アレを使える邪魔族は、ほぼ存在しないだろう」
「でしたら、放っておいてもよいような気もしますけどね。何か深刻な理由でも?」
「単純に読みたいのだ。あれは魔法を使うための呪文でもあるが、世界最高の小説でもある。それを手元に確保し、読み回すことが我々の組織の目的の一つだ」
「ああ、そういうことでしたか。それほど素晴らしい小説であるなら、私も読んでみたいものです。では、その小説の概要を教えていただけますか?」
「表紙は黒。その小説に題名はついていないため、背表紙もふくめて表紙は全て黒一色となっている。見つけたら読むことを止めはしない。だが、そのときは気を付けた方がいいだろう。おそらく、卒倒することになる」
「そういった効果のあるものなのですか?」
「効果ではない。文章だ」
「文章?」
「アレは、世界最高の官能小説だと言われている」
「……はい?」
「我々の業界ではもはや伝説となっている官能小説家、スクラン・リーによって書かれたとされる究極の一冊! 痴女も卒倒するという過激すぎる一品! 禁呪なんてどうでもいいから、とにかく読んでみたいのだ!」
「それをこの可憐な少女である私に探せと?」
「その通りだ! 今すぐ成果をというわけではない。君のように行動範囲が広い探偵であれば、いずれ出会う時が来るかもしれない。その時は、最優先で回収し、我々に届けてほしい。そのための、手付けだけでも払わせてくれ」
「ずいぶんと気前がいいんですね」
「資金だけは潤沢にある。君に手付を払うことも、組織の決定だ」
「それは、どうも。ちなみに、組織の名を伺っても?」
「組織の名は『黄昏時のトレンチコート』。そして、私はその幹部の一人『シモネッタ・スヌーズ』だ。連絡先についてはメモを渡しておこう」
「ど、どうも」
「それでは、これで契約成立だな。見つかり次第、連絡してくれ」
「分かりました。出来れば、貴方のような変態さんとは二度と出会いたくはありませんが」

 ニーヴはドン引きしながらも、コートの男と握手をした。

【次回は12月3日更新予定です】

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