領主様の言語習得

作者:中田かなた

【『嘘つき少年の異世界謀略ゲーム ~異世界で領主に成り上がった少女を連れ戻します~』新シリーズ開始記念特別短編4本目!!】
領主様の言語習得

 ニンフ族によりイプセン領に連れてこられたナツメは、衝撃的な事実を耳にした。それは、ナツメが身に着けているペンダントは『領主の証』というものであり、それを所有するものがイプセン領の領主となるということであった。
 そして、二か月が経過した現在――。
 ナツメは領主という立場に馴染んでいた。彼女な主な仕事といえば、読めない文字で書かれた書類に延々と判子を押していくことと、領内の視察程度だった。
 つまり、手を抜こうとすればどこまでも手を抜ける内容。そして、優秀かつ怠惰な性格のナツメは、手を抜いても許されるぎりぎりのラインを見つけ、それ以上の仕事は一切しなかった。
 だが、秘書であるインデックスはそれをよしとしなかった。

「ナツメ様。判子をすぐに押していただけるのは大変ありがたいのですが、書類の中身にも一応目を通していただかないと」
「え? ああ、そうですね~。でも、そこまで翻訳できる翻訳指輪はないんですよね? だったら、仕方がないじゃないですか。不可抗力です。私は悪くありません」

 ナツメはすらすらと答えた。
 だが、インデックスもその回答を予想していた。彼は一冊の本を差し出す。

「これは『勇者な俺が異世界でニートになった件』というタイトルの小説です。職員を一人張り付けて、朗読させましょう。それなら翻訳指輪で内容を理解できるはずです」
「はぁ。それは構わないのですが、それに意味はあるのですか?」
「勿論です」

 そう言って、インデックスは微笑んだ。
 そして――結論から言えば、ナツメはその小説にドはまりした。

「インデックスさん、あの小説、非常に面白かったです。是非二巻以降を朗読してくれる職員の手配を――」

 そこまで言って、ナツメは気づく。
 インデックスが何故その小説をナツメに渡したのか。

「ナツメ様、職員は皆多忙であるため、そのような余裕はありません。どうしても読みたいというのであれば、こちらに読み書きの入門書を用意してあります」

 こうして、インデックスの術中にはまったナツメは、こちらの世界の言語を習得した。

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