第一編 序章 はじめてのひかり

作者:緋月 薙

序章  はじめてのひかり



 まぶしいひかりにてらされ、『わたし』は目を覚ましました。
だんだん目がひかりになれてきて――まず目に入ったのは木のみどり。空のあお。雲のしろ。そして――

「おはよう……!」

 そう言ってほほえむ、男のヒト。そのうしろには、同じように笑顔をむけて、しずかに立っている女のヒト。
『わたし』にはなぜか、その男のヒトがわたしをおこしてくれた――わたしを呼んでくれたのだと、すぐにわかりました。
……でもその顔は、だんだん悲しそうな顔になっていきました。

「――でも、ごめん……」

(……どうしたの? なんで、悲しい顔をしているの……?)
 わたしはその顔に手をのばそうとしましたが……まだ、うまく体がうごかせません。

「君は『造られし命』。……神の祝福の届かない、異端の存在。……人が、己の望みのために造りだした『ホムンクルス』……」

 悲しい顔でいう男のヒトのうしろでは、女のヒトも、心配そうな顔をしています。

「でも……神が祝福を与えてくれないなら、僕が、僕達が、神が与える以上の祝福を贈ってみせる……! だから、だから……!!」

 ……なみだが落ち、それはわたしのうでに当たりました。
でも……そのなみだはとても温かくて……だから、わたしにはわかりました。
それは『悲しいなみだ』じゃなくて、『うれしいなみだ』なんだ、って。

 ……わたしには、コトバのいみは、ほとんどわかりません。でも……。
(……でも……つたわってるよ……? ……わたしを、想ってくれてることが……)

「 っ! ――心から、君に会えた事を喜ぶよ。誕生おめでとう――『イリス』」

(『イリス』……それが、わたしのなまえ……)
 うしろの女のヒトも、泣きそうな顔で、笑顔をむけてくれています。
『神の祝福』なんて、わからない。でも『祝福』のいみは、すごく、わかりました。
(だから『神の祝福』なんていらない……。わたしには、この『祝福』だけでいい……!)
 ――こころから、そう想います。だから、わたしはつたえたくて――でも、なんていえば、いいんだろう……?

 それに……わたしは、この優しいヒトを、なんて呼べばいいのかも、わかりません。
 ――心配、してほしくない。よろこんで、ほしい。……わたしのキモチを、つたえたい。でも、つたえるコトバが……わからない。
――そんなとき、でした。

(――――え? ……うん、わかった。……そういえば、いいんだね……?)

 わたしと、男のヒトをなでるようにふいた、優しい『かぜ』。
……笑顔のようにあたたかくて、イタズラのように、髪をくすぐるかぜが、そのコトバをおしえてくれました。
――だからわたしは、あまり上手くうごかせない口を、うごかそうとしました。ほんの少しでも、つたわればいいと思って――

「……あ、……り、がと……『おとう、さん』……」

「……!」
 なんとか、しぼり出せた声……。おどろいたような顔をする、『おとうさん』達。
(きこえたんだ……)
 あんしんすると、なんだか急に、眠たくなってきました……。
(わたしのキモチ、とどいたかな……? ……とどいてると、いいな……)
 ぼやけていく意識のなかで…おとうさんがだきしめてくれたような気がしました。
(……あたたかい……な……)
 わたしは『祝福』につつまれて、もういちど眠りにつきました……。

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