第二編 幕間の4 死ぬ事とみつけたり(○○的に)

作者:緋月 薙

幕間の4   死ぬ事とみつけたり(○○的に)



(SIDEアナザーズ)


 ――変態集団担当のエドです。
 現在、外では日蝕が発生中。自警団員ではない俺は本来、他の冒険者たちと共に遺跡の入口で、魔物を迎撃する任に就くはずだったのだが……少々理由があって、今は自警団員の詰め所で待機している。
 で。詰め所内の様子はというと――

「量産班! 進捗(しんちょく)状況は!?」
「追加分、今上がりました! 以後、我らも塗装班に参加します!」
「よし! 塗装班の状況は!?」
「追加分も含めると――全行程の7割! 量産班の援護があれば、日蝕終了までに全て完成させられそうです!」
「よし、暇な内に、この『1/8女神様フィギュア、ステージ衣装バージョン』の量産を何としても完遂(かんすい)する! 教会警備任務のクジ引きに漏れた鬱憤(うっぷん)、ココで晴らすのだ!!」
「「「「「 ソレを言うなコンチクショォォおおおおおおおおおおおおッ!! 」」」」」

 ……と、こんな様子で。
 日蝕中に自警団に割り振られた仕事は、一部の人員が遺跡での魔物迎撃組に参加した以外では、主に街内の警備・巡回・防犯。
 多くの者が迎撃に出ている今、手薄になっている街を守るのが、我々の任務。
 そして。任務の中には、重要施設の警備も含まれており。その『重要施設』には、聖術が使えない日蝕下で唯一の治癒術を持つ女神様が居る場所――教会も含まれる。

 ……当然の様に、教会警備任務――別名、女神様観察隊への志願者が溢れ。
 明暗を分かつ壮絶なクジ引き合戦の末、敗北した面々が、ここに居る者たち。
 ローテーションで巡回もしているため、全員がここに居るわけでもないが。

 で。なぜ任務中なのに『暇』で、待機組が総出でグッズ作っているのかと言えば。
 巡回組、施設警備組、遺跡への派遣組以外は、非常時に備えての予備戦力として待機任務となっているのだが……防衛戦力は十分な上、さらに上空を守護竜殿が旋回し、哨戒(しょうかい)任務に()いている。

 よって余程の事態が突発的に発生しない限り、我々に出番は無い。同時に緊張感も無い――ならば手空きが大勢いるのだから、手の込んだグッズでも作るか!

 そんな、我らにとっては至極当然な展開が発生し、今に至る。
 かく言う俺も、分割された各部位に着色する作業を――……ん? し、しまった!
「レオナルド殿、問題が発生した。一部、配色を決めていなかった部分がある」
「――なんだと? 髪の陰影から爪まで、細かに決めていたはずだが……どこだ?」

「この麗しき女神像にお穿きいただく下着は、何色にすべきだろうか……?」

「「「「「 …………ッ!? 」」」」」
 聞いた全員の目が見開かれ、一瞬にして血走った。
「「「「「 ……………… 」」」」」
 全員が無言で、だが目だけはギラギラとさせながら『誰が何を提案するんだッ!?』『おい、誰か何か言えよ』といった、壮絶な様子見合戦が展開される。
「――あ、ああー……女神様らしく清楚かつ無難、そして『あとは各自でご想像を』の意味も込めて、『白』が――」
 ……冷戦を治めるために、ついにレオナルドが口を開いた――その時。
『ガララッ!』と音を立て、窓が勢いよく開かれ。

「イリスちゃんの下着の話と聞いては黙っていられません……!」

「「「「「 何やってんですか団長ッ!? 」」」」」
 窓から強襲を仕掛けてきたのは、『団長』こと、自警団長にして親衛隊長、そして――専属の奏者として女神様のパートナーでもある、リリー嬢。
「いえ、近くまで来ていた時に聞き逃せない話題が耳に入ったもので、思わず窓から突入を。――別に、この話題のために教会から飛んできたわけではないですよ?」
「「「「「 ……………… 」」」」」
 全員が『この人ならやりかねない』と思っただろうが、賢明にも誰も語らず。
 と。そんな沈黙の中リリー嬢は、先行で作成した女神像の組立見本を手に取り。
「しかし――良い出来ですね。それに、見た事も無い形式の人形です。……この製造方法や知識はどこから?」
「はっ。『フィギュア』という人形で、東の大陸からの知識です」
「――ああ、例の『東の商人』からですか。少々気になる人物ですが……」
 話によると、露店市場に出店していた『東から来た』と言う男が、レオナルドに売り込んで来たらしい。今はもう、街を出たらしいが――
「それはそうと……団長、何をしに? 女神様たちの護衛に就いていたのでは?」
「っと。すみません、人形の話どころではありませんでしたね――」
 情けない理由ではあるが……ココに居る者は皆が同類のため、責める声はあがらない。

「緊急事態です。街の中に魔物が大量発生する恐れがあります。――総員、現在の作業を中止して出動の準備を!」

「「「「「 そんなヤバイ用件を後回しにするなああああああああッ!! 」」」」」
 流石に全員が声を上げる。――いくら何でも、忘れて良い事態ではない……!
「……そうは言いますが。仮に緊急出動中に、路上に『イリス』と書かれた女児用下着が落ちていたら、どうしますか?」

(ただ)ちに飛びつきます」
「争奪戦を開始します」
「殺してでも奪い取る」

 図らずも、この街の治安機構を容易に壊滅させる手段が明らかになった。
「――こほん。それはともかく団長、どういう事でしょうか? 現状、特に異常が発生している気配はありませんが……?」
 リリー嬢が開けた窓から外を、上空を見上げるレオナルド。
 日蝕に(ともな)い暗くなり始めた空には――悠然と街の上空を旋回する、巨大な守護竜。
 変わらぬ速度で、空を泳ぐ様に巡回するその姿は『恐れる事はない』と告げている様で――街に異常が発生しているとは思えない。
「――ええ。現状、その事態はまだ発生しておりません。ですが、それを預言している方が居ます。……発生してからでは遅い以上、全力で備えるべきでしょう」
「備えた方が良い、というのは分かりますが――預言、ですか……」
 恐れがあるなら、備えるべき――それは分かるが……。
 噂に聞く、女教皇の『神託』などならともかく、ただの『預言』と言われても、どうしても『胡散臭(うさんくさ)い』という印象が強い。
「ちなみにその預言は、可愛らしい少女――リーゼちゃんが怯えながら語ったものです」

「――野郎共! 直ちに準備だッ!!」
「「「「「 うおっしゃああ! 全力で行くぜぇえええええッ!! 」」」」」

 例えどんな眉唾物であろうと。
 いたいけな少女の訴えならば、死力を尽くして任務に当たる。
 それこそが我ら――イリスちゃんを始めとする幼女の守人、『幼き神々の守護者(ガーディアン
オブ リトルゴッズ
)
』!

     ◆     ◆

 我々は人員を五つの部隊に再構成し、出現が預言されている場所を包囲すべく、移動していた。

 その場所は――市街地のど真ん中の廃屋。もし本当に、その場所に日蝕で狂暴化した魔物が大量発生したのなら――惨劇(さんげき)は免れないだろう。
 総員で急行し、その廃屋を破壊してはどうだろうか。そんな意見も出たが――どういう手段で出現するかが分からないため、その案は却下された。
 転移陣でもあるのなら破壊で済むが、仮に地下遺跡からの物理的な『門』でもあるのなら、建造物の破壊は封印を完全に壊す事を意味してしまう。
 かと言って、日蝕中に発生するというのなら、調査をしている時間は無い。調査をしている最中に出現されたら、我々も致命的な損害は免れないだろう。

 よって――発生の阻止は諦める。発生した魔物の群れを四部隊で分断・誘導し、出現場所が手薄になったところで残る一部隊が突入。
 発生原因を突き止めた上で破壊、または再封印を行う。以上が今回の作戦内容。

 そして――俺が配属されたのは、突入を敢行する、レオナルド率いる主力部隊。
「しかしレオナルド殿。なぜ俺をこの部隊に? 話によると、自警団の秘匿(ひとく)技術を用いるという話ではないか。部外者の俺が居て良いのか?」
「うむ。……その秘匿技術は集団で用いる特殊な精霊術でな。絶大な威力を誇る代わりに、発動条件があるのだ。――この部隊の編成はそれの使用を前提にしている」
「……しかし、俺は精霊術の心得など無いぞ?」
「それなら大丈夫だ。術の核となる俺以外は、条件さえ満たせば難しくはない。――指示は出す。お前なら大丈夫だ」
 確信を持って言うレオナルドと――それを聞いていた他の隊員も、力強く頷く。
「……わかった。――いや、よく分からないが、とにかく全力を尽くそう」
「うむ、期待している」
 そんな会話をしていると、目的の廃屋が見えてきた。入口が見える場所に潜み、他の部隊が配置に着くのを待つ。
 ――しかし……その術の『発動条件』とは何だ?
 この部隊の特色は全員が親衛隊員である事と――ああ、この部隊だけ全員が男性か。この集団で使う『術』――ん?

 突如、廃屋から尋常(じんじょう)じゃなく慌てた様子で、四人の男が飛び出してきた。

「自警団だ! 止まれッ!!」
「「「「 なッ!? 」」」」
 レオナルドを先頭にして飛び出すと、慌てて逃げ出そうとする男たち。
「逃がさんっ! ――捕縛ッ!!」
「「「「 はっ! 秘技、クイック亀甲縛り!! 」」」」
 自警団員四人が即座に動き、洗練された動きで完全に縛り上げる。
「……レオナルド殿。まさか、自警団員は皆がこの縛り方を出来るのか……?」
「うむ、団員の(たしな)みだな。そんな事より――おい貴様ら。あそこで何をしていた?」
 その言葉に、縛られた男たちは怯えた様子で――いや。恐れているのは……背後? 彼らが出てきた廃屋を気にしながら、懇願するような眼で。
「離せ――いや、逃げろ! 奴らが――」

 直後。突如として廃屋が爆発、見る間に屋敷を炎が包んだ。

「なッ!? ――く、何があった!? 言え!!」
「……あ、あの屋敷に、遺跡の中に飛べる転移陣があって――い、遺跡で探索していたら、とんでもない魔物の群れが……だから慌てて逃げて――」
「 ! その転移陣は!? 出てくる時に閉じたんだろうな!?」
「「「「 …………っ 」」」」
 ……つまり、要約すると。
 遺跡地下への抜け道となる転移陣があり、それを使い無許可で探索をしていた。
 その最中に日蝕が発生。大量発生した魔物に慌てて逃げてきた。
 遺跡に繋がる転移陣は、繋がったままで――

 その話が正しいと証明する様に。炎上する屋敷の中から獣の唸り声が聞こえてくる。
 そして――無数の奇怪な生物が、飛び出してくるのが見えた。
「ちっ! 二名はそいつ等を連行、牢に放り込んでおけ! 包囲は間に合うか!?」
「教会方向への路地から回り込む予定の班は、おそらく間に合わない……!」
 ……包囲しきる前に、魔物に教会方面へ抜けられた。

 その事実に、全員が女神様の身を案じるが――その時、教会の方角に風の柱が生じた。

 それは、一定範囲を守る壁の様にそびえ立つ。……こんな事ができるのは――
「あれは――おそらく女神様の精霊術、風の結界か! ……あちらは教会の警備担当に任せ、我らは当初の作戦通りに動く! 各自、行動開始!!」
「「「「「 おおおおッ!! 」」」」」
 あの結界が見えている間は、女神様たちは無事。ならば我々は、己の戦いに専念するのみ――


「後ろ! 危ねぇ!!」
 一人を背後から襲おうとした魔物が、火炎放射の一撃により焼き尽くされた。
「! 助かった! ……だけどお前、精霊術なんて使えたか?」
「ああ、この前入手した魔道具だ。使い捨てだが一時間だけ火炎攻撃を使える。――ただし魔法は尻から出る」
「良い道具だな。今度俺も買おう」
「まだまだ来るぞ!」
「まかせろ! 例え人型じゃなかろうと、俺の亀甲縛りからは逃れられない!」
 そんな安定の変態たちと共に、どれほどの時間を戦っただろうか。
 分断作戦は、上手くいった。我々以外の四部隊は各々が魔物を引き連れ、逃げながら徐々に数を削っていく戦法をとっている事だろう。
 教会の方に抜けていった魔物に、住人が数人追いかけられた様だが、それも無事に教会に逃げ込めたらしい。
 そして教会には先程、役所への連絡に走っていた団長ことリリー嬢が向かったそうなので、到着さえすればもう安心だろう。

 ただ、唯一の誤算。それは――湧き出す魔物が止まらない事。
 当初出現した、膨大な数の魔物。その大半を引き離したが、断続的に出現する魔物により、我々はまだ廃屋の敷地内にも進入できていない。

「レオナルド殿! 例の術は使えないのか!?」
「あの術は使えて二回! その二回で確実に魔物の殲滅(せんめつ)と転移陣の完全破壊をするためには、せめて敷地内に入らねば!」
 その言葉に、我々の行く手を阻む魔物たちを睨みつけ――その時だった。

 教会の方角から、光の柱が天に伸びた。

 その光は、かつて見た守護竜殿の『裁きの吐息』を彷彿とさせる白光。
 しかし、それでいて更に神々しく、神聖なものに感じられた。

 我々だけでなく魔物すらも動きを止める中――光の柱が、大樹の如く枝葉を広げた。

 枝分かれした無数の光が、輝く軌跡を残しながら、魔物たちに襲いかかる。
 眼前の我々には一切の影響を与えず、魔物のみを穿ち、切り裂き、焼き尽くす。
 光が消えた後。廃屋が燃える音を聞きながら、ただ呆然とする我ら。
 神々しい光に誘われたのか、屋内避難していた人々が、窓から顔を出すのが見えた。

「っ!? 好機だ! 今の内に屋敷ごと転移陣を破壊する!!」
「「「「「 ――お、おおおッ!! 」」」」」
 確かに、出現していた魔物は消えた。だが転移陣は破壊されていないらしく。未だ燃える廃屋の中から、再び獣の咆哮(ほうこう)が聞こえてきた。
「切り札を使う! ――エドよ。この術で必要なのは、精神同調。魔力の多寡や技術より、意志や想いが術の威力を左右する。……我らの詠唱に、意思を重ねろ」
「ぶっつけ本番か……いいだろう、やって見せようではないか!」

「では、いくぞ! ――『我ら、身の内に宿せし炎、現世(うつしよ)(あらわ)さんと欲す』――」
 レオナルドの詠唱に合わせ『身の内』、つまり魂に宿す(こころざし)を意識する。
「――『我らは防人(さきもり)、例えこの身滅ぶとも、御霊(みたま)(ほむら)永久(とわ)に消えず』――」
 命を賭してでも守りたい者……幼き少女たちを守る。それが我らの意志……!
「――『萌え燃える志のままに、顕現せよ、我らの魂の炎』――」
 願わくば……幼い少女から『ありがとうございます! ちゅっ♪』とかされたい。
 そんな萌える心のままに――

 ――ん? 何か自然と、思考が妙な方向に? しかも詠唱の中に妙な一文字……。

 しかし既に術は起動し始め。我々の体の周りに、炎が鎧の様に展開される。
「――『我ら幼子(おさなご)に好かれんが為、煉獄の炎を纏い、敵を滅する』――ッ!」
 ちっちゃい子に好かれて、チュッチュされたいお――……はっ!? まさかレオナルドの情念に共鳴して、思考まで引き寄せられ――
 我らの精神が共鳴し、萌え燃え盛る情念のままに、身に纏う炎が勢いを増す。
 それは我ら諸共に一つの巨大な火球となり――そして、術が完成する。

「「「「「 行くぞ! 『ちっちゃい子大好き! 炉理魂・バーニング・ファイア』あああああああああああああああああああああああああッ
」」」」」

 ――せめて技名は取り繕ぇぇえええええええええええッ!!
 集団の情念に取り込まれるのを免れた、わずか一欠片の理性が叫び声を上げるが――意思の大半は変態情念の集合体と共に、獄炎となって突き進む。
 そして――着弾。超高温の白い火柱が屋敷を包み込んだ。

 術が終わり、炎が収まった時――そこに屋敷は瓦礫の欠片一つとして無く。
 そして、そこに残る我らは――全裸だった。

「なんで!? なんで全裸!?」
「はっはっは、それはあんな高温に、鎧や衣服が耐えられるはずが無かろう?」
「じゃあ何で俺たちは火傷一つ負っていない!?」
「あの術には、術者の保護機能も付いているからな」
「ならば服も守れよ!?」
 俺以外は全員が知っていたらしく、全裸のまま勝利の高笑い。
 全裸男たちが揃って高笑いという『誰が得する!?』と問い詰めたくなる光景だが――

 悦びに水を差す様に。地面――地下から青白い光が生じ、再び魔物が姿を現した。

「……ちっ。陣は地下にあったのか。まさか燃え残るとはな」
 苛立たし気に舌打ちをするレオナルド。しかし、その顔に危機感は無い。
「一度発動させた以上、第二撃の発動は容易。……次こそは消し去る。――行くぞ野郎共! 今度は『雷』だ!!」
「「「「「 おおおおッ!! 」」」」」
「――え? あ、ちょ待――」

「『我らの幼女好きの情念、(ほとばし)れ雷鳴となりて』――」
 ――もはや詠唱の初っ端から、取り繕う気が一切無い……っ!?

 詠唱に伴い、我々の身体が雷光を(まと)う。……全裸の男たちが、ほのかに青白く輝く。
「ひゃっはー! 一匹たりとも逃さねぇぜ!」
「はっはっは、逃げられると思うなよ? これが私の『おいなりサンダー』!」
 輝く全裸の男たちが、近くの魔物に襲い掛かり――絡み付き、締め上げ、雷光で焼き尽くす。……何故か足技が多い。
 俺は若干の躊躇(ためら)いを覚えていると――ふと視線を感じ、辺りを見まわす。

 近隣の家屋の窓からこちらを見る、住人の方々。
 それだけでなく――路地の影から、こちらを見る複数の視線も。

「お、おい! 周囲の目が! 少しは隠せ取り繕えッ!!」
 慌てる俺に、レオナルドは戦いながら、それでいて落ち付いた声で語る。全裸で。
「……東の大陸から伝わってきた知識なのだが――昔とある国には『武士』と呼ばれる高潔な兵士――いや、騎士に近い存在が居たらしい」
「な、なんだ、こんな状況で突然!?」
 落ち着いて語るレオナルドと、戸惑う俺。戦いながら。全裸で。
「彼らを語る言葉に、この様なものがある。――『武士道とは、死ぬ事とみつけたり』」
「……死ぬ気で頑張れ、という事か? それか、どうせ死ぬなら派手に散れ、か?」
 戦いながら会話を続ける。いつの間にか俺も足技を多用していた。しつこいが全裸で。
「――それも間違いではないとは思うが……『正しく死ね』という事であろう。無様に生き恥を(さら)すくらいなら、誇り高く散れ。そういう事であろう」
「なるほど、奥が深いな。……しかしそれなら『正しい生き様を』でも良いのでは?」
 語られる格言を認めながらも、俺は素朴な疑問を返す。
 ……衆人環視の中、全裸に雷光だけを纏い、魔物と戦闘しながら。
「自分本位の生き方では、誇れる『正しき死』は迎えられん。故にこの言葉は――『命を懸けるに値するものを見つけ、それに(じゅん)じろ』、そういう意味であると解釈している」
「……なるほど、な」
 その言葉を受け入れながら――猿の魔物の首に足を絡め、締め付け(ひね)る。
「そして――その誇り高き生き様・死に様は、我らも見習うべきものであろう」
「…………ん?」
 言いたい事は分かるのだが……少々、イヤな予感がしてきた。
「周囲に何と思われようと、我らが信ずるものの為に生きる! しかし、我らは武士ではなく――そして死ねば、第一目的である幼女を愛でる事が出来なくなる!」
「「「「「 その通りッ!! 」」」」」
 黙々と変態技で魔物を屠っていた男たちが、揃って同意の声を上げる。
 ……イヤな予感が、更に強くなってきた。
「故に我らはッ! 我らの生き様をこう定めよう――ッ!!」
 男達は集い――雷光を纏って魔物の集団に突撃しながら声を合せる――

「「「「「 ロリコン道とは! (社会的に)死ぬ事と見つけたりッ!! 」」」」」

「好き好んで(社会的に)死にたくはないわあああああああッ!!」
 しかし、俺の叫びは聞き入れられず。魔物を一掃した全裸男たちは、未だ淡い光を放つ転移陣を睨みつけ。
「――さぁ今度こそ終わらせよう! 解き放つぞ我らの迸り――ッ」
「「「「「 おうッ!! 」」」」」
 抵抗しようとするが……一度術を発動させて共鳴してしまった精神は、勝手に集団に引きずられて身体を動かし――

「「「「「 これで終わりだッ! 『幼女のための! ローリング・タイガー・サンダー(略称:ロリ虎さん♪)』ああああああああああああああッ!! 」」」」」

 ――だからせめて技名は取り繕え、そして股間は隠させてぇぇえええええ!!
 俺の心の叫びは何処にも届かず――虎の形をした雷光は大地に突き刺さる。

 轟音と、雷光が消えたとき。
 そこには熱を帯びた大穴と――力尽きた全裸の男たちが残った。
「……終わった。…………いろんな意味で」
 立っているのは、俺のみ。他の隊員は、全員が意識を手放していた。
 呆然としながら、ふと上空を見上げると――そこには、真紅の守護竜殿が。
「……何か言ってください、ハールート殿……!」
 その言葉は自虐ゆえか、慰めの言葉を求めてか。自分でも分からないでいると――守護竜殿は、躊躇いがちに口を開き。

『……お疲れさまッス』

「ハールート殿おおおおおおおおッ!?」
 投げやり気味にそう言って飛び去って行く守護竜殿を見送りながら。……俺も、意識を手放した――


 後日。どうやらリリー嬢が裏で動き、『魔物の精神攻撃で半ば錯乱状態に陥っており、それでも戦っていた』という美談が流れ、社会死は(まぬが)れた事を知った。

 ……だが。自警団詰所にやってくる女性は、目に見えて減ったのだった――



   ◆◆◆次回更新は未定です◆◆◆

作品応援ボタン(1日1回)応援コメントを書く