第三編 幕間の3 新部隊『MZT隊』と古代の門

作者:緋月 薙

幕間の3  新部隊『MZT隊』と古代の門
(※今回は 四章の1 光と闇 と合わせて2話分の更新になります)


(SIDE:アナザーズ)

「さあ、楽しい楽しいピクニックに行きましょう♪」

「「「「「 ……………… 」」」」」
 陽気に告げた団長ことリリー嬢に、俺たちは――全員、沈黙を以て応えた。
 ここは自警団詰所内の――親衛隊用の会議室。
 つまりここに居るのは親衛隊員だけであり、女性隊員も少数いるとはいえ、基本的にゴッツイ野郎共が主体となって構成されている。
 ……はっきり言って『みんなで楽しくピクニック♪』なんて柄ではない。
 そのため……全員が、リリー嬢に疑いの眼を向けている。

 つまり――『何を企んでいるんですか?』と。

「……その眼は若干不服ではあるのですが、無理も無いので気にせず続けます。――実は、ちょっとした所から依頼が入りまして」
「依頼、ですか? ピクニック行ってこいとか……どこのアホがそんな依頼を?」
「微妙に胡散臭いですが、どこからの依頼なんです?」
 どう考えても普通の依頼ではない。
 しかもリリー嬢が楽しそうに言っているとなると……絶対にまともな依頼ではない。
 それを察した面々が訊くと、リリー嬢はにっこりと笑い。

「ええ。女教皇さまからの依頼です♪」

「「「「「 全然ちょっとしてねぇよッ!! 」」」」」
 ……考え得る最上位からの依頼だった。
 さすがに全員がツッコミをいれると――リリー嬢は、なぜか安堵した顔を……?
「そうですよね。その反応が普通ですよねぇ。――そんな方と気安げに話す、あの方々が普通じゃないんですよね……」
「……ああ、それを確認したかったんですか」
 どうやら、己に残る『常識』を確認したかったらしい。
 ……守護竜が友で聖殿騎士団長が養父であるカリアス殿をはじめ、上級精霊術師であるフィアナ嬢や、女神様たるイリスたん。最近、特殊能力に目覚めたという新女神のリーゼたんに……比較的常識の範囲と思われているアリアたんやエリル少年にも、戦闘面で勝てるかアヤシイと思っている者は少なくない。
 ……そんな、いろいろオカシイ戦力が集う教会組。最近それに引き込まれつつあるリリー嬢としては、少し不安だったのだろう。

「まぁ、ここで常識を聞いても意味が無いかもしれませんが」

「「「「「 それもそうですね! 」」」」」
 幼女好き変態集団で常識を確かめるなど、間違いにも程がある。
 ……逆に言うと、そこまで不安だったのかもしれないが。
「――さて、話を元に戻します。教皇様より自警団に依頼が来まして。内容は――先の冒険者たちが見つけた、遺跡の未確認領域の探索です」
「……なるほど。では、この前マックスことマクスウェル殿が来た理由は……?」
 ……先日、我が無意識における相当な綱渡りの末に、同志となったマクスウェル殿。
 言われてみれば、彼は何か大きな荷物を運んで来ていた。
 聖殿騎士団長が直々に運んで来た物。それはつまり、教皇からの――

「――ええ。教皇に唆され、義孫に会いに来た所でパシらされたそうです」

「「「「「 言い方ッ!! 」」」」」
 ……この国のナンバー2は、上司に相当な苦労をしていそうだった。
「――とにかく。教皇様より転送珠の数セットを含め、手厚い支援物資を受け取っています。さらには……直接『命令ではなく依頼』とのお言葉をいただいております」
 つまりそれは、身命を()す事すら求められる勅命ではなく……危険ならば速やかな撤退も許される、通常の依頼であるということ。
 貴重品である転送珠も複数与えられていたりと、相当な好待遇と言える。
「……ふむ。特に期限を決められているわけではない上に、転送珠で一時帰還や補給も容易。ならば少数ずつの交代制で、慎重に進めていくべきでしょうな」
「そうですね。日蝕の後で、強力な魔物がまだ残っている可能性もありますから、私もそれでいいと思っています。――あ、そういえば言い忘れていましたが……」
 副長たるレオナルドの言葉に同意したリリー嬢が、何気なく付け足したのは。
「後日、イリスちゃんやリーゼちゃんも行く事になる可能性も――」

「全員、初っぱなから全力で行くぞおおおおおおおッ!!」
「「「「「 うおっしゃああッ! 魔物なんざ狩り尽くしてやるぜええッ!! 」」」」」

 幼女のためなら生命を懸ける。それが我ら『幼き神々の守護者』。
 女神さま方が来るとなれば、その万難を排すために死力を尽くすのみ!
 ちょっぴりの期待と下心も込めて!!
「隊を三つに分け、遺跡探査、通常任務、補給・連絡要員を交代制で行おう」
「了解。準備は補給要員に任せ、探査班はすぐに出るべきだ。一刻も早く魔物を狩る!」
「だな! 女神さま方の危険を減らすためにも、一匹でも多く狩り取る……!!」
「……な、なぁ? イイ感じの触手モンスターが居たら、わざと残――ごはッ!?」
「そうと決まれば、我ら親衛隊『幼き神々の守護者』、出るぞッ!!」
「「「「「 ひゃっはああああっ!! 」」」」」
 出発前に一名の脱落者が出たが、こうして俺たちは遺跡に向かう事になった。

「……あなた方にとってイリスちゃんたちは――最早、栄養剤どころかキケンなお薬みたいな事になってはいませんか……?」

 そんなリリー嬢の声が聞こえ、少し不本意に思うが……否定は出来ようはずもなく。
 ――変態 + 薬物。その合成結果が、ここにはある。

      ◆      ◆

 と。そんな経緯で遺跡に潜り始め――行程は順調に進んでいた。

 やはり日蝕の影響が残っていたらしく、稀に強めの魔物と出くわす事はあった。
 罠のように足元から突如襲撃してきた、巨大なミミズの魔物。隊員の一人が丸呑みされたのだが――早期の救出に成功したため、防具や衣服が溶かされて全裸になったが、無傷。
 さらにその後、本隊の間近に突如として湧いた植物の魔物に、別の隊員が捕らえられた事もあったが――リリー嬢が絡み付く(つた)を全て切断。魔物の抵抗により(ごく)(わず)かに狙いが逸れ、隊員の衣服が斬り裂かれて全裸になったが、こちらもやはり無傷。
 他にも――魔物の精神攻撃を受けて錯乱して全裸になったり、大型の魔物の突撃をまともに受けた隊員が、なぜか全裸になるだけで済んだり、意味も無く全裸になったりと、時々全裸になる隊員は出たが……ここまで負傷者は出ていない。
 全裸になった者も全員が男なため、問題は無い。

 ……変態っぷりが、発生する事象の因果律すら侵食している気がするのが、一番の大問題な気はするのだが。

 とにかく――魔物との戦闘は多かったが、我々は性格や性癖にこそ問題はあれど猛者揃い。サクサクと狩りながら先へ先へと進み……今は、遺跡突入から三日目。
「っ! 止まってください。――前方の角を曲がった先、広場になっている様なのですが……そこに、巨大な魔物の反応です」
 風の精霊を用いた索敵をしていたリリー嬢が、魔物の存在を察知。警戒を促す。
 リリー嬢は皆にその場で留まる様に告げると――単身で魔物の確認に向かう。
 風の操作により音や気配をほぼ完全に消し、角の先を覗いたリリー嬢は――
「――わー……」
 脅威を感じた――というより、ドン引きした様な声を上げてから戻ってきた。
「――団長、一体何が……?」
 レオナルドが声をかけると、リリー嬢は凄まじくイヤそうな顔で応え。

「……広場を埋め尽くす程の大きさの触手の魔物が――」

「「「「「 うっわー…… 」」」」」
 ……『触手』という物は、やはり何かを捕らえるための物で。
 それが無数にあるという事は、獲物へ一斉に絡み付き、捕食するのが目的。しかもそれに特化した魔物となると……確実に獲物を仕留めるために、麻痺などの効果を持った体液を使う個体が多い。

 ……つまり。体液ぬらぬらで絡み付き締め上げ、動けなくする魔物で。その獲物を捕らえる様子から、エロモンスターの筆頭と扱われる魔物である。

「――とりあえず女性は近づかない方が良いでしょう。そして……『MZT隊』集合! 今こそ我らの力を見せるとき!!」
「「「「「 うおっしゃあああッ!! 」」」」」
 レオナルドの指示の下、『MZT隊』と呼ばれる特殊部隊の面々が集まり、気合の雄叫(おたけ)びを上げた。
 ――『MZT隊』。彼等は日蝕の際の経験から組織された、一芸に特化した者たち。
 それにより、彼等は親衛隊において最大の火力を誇り、同時に――

「――よし、とりあえず脱ぐぞ!」
「「「「「 イエス! レッツ脱衣!! 」」」」」

 ……変態集団の中においても、屈指の変態っぷりを誇る者たちの集団。
 日蝕の際に用いた特殊な精霊術。思念――と言えば聞こえはいいが、統一された煩悩や欲望を紡ぎ合わせて火力とする秘匿技術を用いる事に特化した者たち。

『MZT』=マジカル全裸特攻隊。……またの名を『社会的自爆部隊』。

 実は俺も候補に入っていたらしいが……『まだ恥じらいを捨てきれていない』と、見送られたらしい。――恥じらいと一緒に常識まで捨てたくはないので、大歓迎だが。
「行くぞ野郎共っ! 萌え萌えバーニング♪」
「「「「「 イェアッ! 幼女サイッコォォォォオオ!!
」」」」」
 ……レオナルドの声に合わせ、煩悩(ぼんのう)を編み上げて火力に転換。超高温の白炎を纏う。
 白き炎の魔神(全裸)となった男たちは、悠然と魔物の方へと歩を進め。

 ――――ッ!?(←変態の姿を見た魔物がドン引きした際の、声なき悲鳴)

「……触手の魔物すら、アレの前ではドン引きするのですね」
 リリー嬢ですら、アレの前ではドン引きするらしい。
「……アレ見て喜ぶのは、かの両刀魔王くらいではないかと――」
 と、俺が言った直後だった。
 すぐ間近に、渦を巻く様に闇が集まり。それは空間に開いた穴の様になり――

 両刀魔王が現れた。
「――はっはっは! 僕たちを呼んだかい?」

「「「「「 呼んでねぇよ!? 」」」」」
「……そうかい?」
 全員が直ちに否定すると、少しだけ残念そうな顔をして、魔王は穴へと消えて行った。
 ――世界を渡る異界の魔王に、ガッツリ目を付けられている気がするのだが……?
 おそらく全裸特攻中の面々以外の全員が、そんな戦慄を抱いただろうが……気を付けたところでどうにもならない。
 精神衛生上、考えるのを止めるべきと判断。魔物の方に視線を戻すと――ちょうど目の前を熱風が吹き抜け……それが収まった後、レオナルドが歩いて来た。
「――団長。魔物は跡形も無く消滅いたしました。そして……かの冒険者たちが使っていたと思われる、機能が停止した転移陣を発見。――目的地は間近の様です」
 跪き、そう報告するレオナルド(全裸)。
「……そうですか。お疲れ様です。――そして服を着なさい」
「む、これは失礼を。――全員、パンツを穿け!」
「「「「「 了解! 納刀ッ!! 」」」」」
 示し合わせた様に、どこかから取り出したパンツを一斉に引き上げる一同。
 ……『納刀』て。『刀』とは何の事だろう――などと考えてしまうとまた両刀魔王が来そうなので、敢えて意識を逸らしてリリー嬢に話しかけた。
「……団長。あの特殊技法――精神汚染的な副作用でもあるんでしょうか?」
「――適性があり過ぎると、想念を統一する過程で相乗効果が発生し……想念が増幅。術後に増幅された想念がそのまま戻って――という事例が極稀にあるとは聞きます」
「……とても聞き捨てならない内容な気がしますが……つまり?」

「――変態指数が、彼等の精神内で相互増幅しあっている可能性が高いかと」

「「「「「 人生オワタ/(^o^)\ 」」」」」
 聞いていた全員が、開き直ったような笑顔で『お手上げ』を表明した。
 ――それもそうだろう。元から重度の変態が、さらに相互増幅したとなれば……。
「とにかく……彼等の犠牲を無駄にしてはいけません。――先に進みましょう」
「「「「「 はいッ!! 」」」」」
 俺たちは悲しみ――は特に無いが、成れの果てを目の当たりにした恐怖を踏み越え、目的としていた地へと足を踏む込んだ。
「あのー……? 我々、まだ全然ぴんぴんしておりますが……?」
 社会的死人が健在を主張してきたが……目を合わせない様に、前に進んだ。


 レオナルドが言っていた『停止した転移陣』は……広場の奥、さらに先へと続く通路の脇にあった。
 それを調べ、どうやっても再起動しないのを確認した後、我々は奥の通路へ。
 その通路の先は――明らかに、ここまでの遺跡と空気が違った。
 ここまでの道の多くは未舗装の堅い土の地面か、この場所に近づいてからも精々が石畳だったのだが……ここは材質すら判別できない、軽い光沢のある床。
 周囲の壁も多少の劣化は見られるが――白を基調として統一されており、我々の常識から考えれば、どうしても三千年の時が経った場所とは思えない。
「この、遺跡という名の迷宮――その大元となった施設の一部なのでしょう。つまりここは中枢か……そうでなくとも何らかの重要設備が、この先にあると思われます」
 そのリリー嬢の言葉に、皆が気を引き締め直す。
「……では、我々が先行しましょう。――行くぞッ」
「「「「「 ウッス! 」」」」」

 レオナルドの声に従い、先導する様に進む『MZT隊』――の、パンイチ集団。

 ――引き締められた『気』が、尽く抜け去って行くのが感じられた。
「……待て、レオナルド殿。何故に下着以外の衣服を身に着けない……?」
「む? 決まっているだろう、例の術をいつでも発動できる様に、だが?」
 俺の問いに、レオナルドが『当然』と言い放ち、他のMZT隊員も頷く。
「……ああ、そういう事か。――公衆の面前で裸を(さら)す事に快感を覚え始めていたら、どうしようかと少々心配していたのだが――」
 ――取り越し苦労に終わってくれたか、そう続けようとしたところ。

「「「「「 ……………… 」」」」」

「なぜ気まずげに眼を逸らす!?」
 ――なんというか……やっぱりいろいろ、既に手遅れっぽい。
 リリー嬢も危機感を覚えたらしく、眉を(ひそ)めて思案しだした様子で。
「日常業務に支障をきたす前に、どこかで更生を図らせた方が良さそうですね――」
 そんな呟きが聞こえ……直後、またも唐突に空間に穴が開き――

 両刀魔王、再臨。
「――いつでもウェルカム」

「「「「「 ……だから呼んでねぇよ!! 」」」」」
 またも、全員で拒絶。だが、最初に少し間があったのは……俺だけではなく、皆も『それもアリか?』と考えたせいか。

 ……とりあえず。空間の穴と共に消えて行く魔王を見送ってから、先に進む事に。
 通路の先には、居住区だったと思われる場所があり。比較的安全に休息を取れる、拠点と出来る場所が見つかった事を喜びながら、先に進むと――

「――これが、例の『門』ですか……」

 そう口にしたリリー嬢の声にも、隠しきれない驚愕の色が見られた。
 団長を務める女傑たるリリー嬢をも驚愕させる『門』。
 それは、突如として開けた広大な空間に存在し――確実にイグニーズの街の街壁に設置されている物より巨大で、開けばハールート殿ですら優に出入りできるだろう。
 そして――その大きさもさる事ながら、精緻(せいち)な彫刻のなされたそれは……最早『城門』と言ってしまった方が相応しいと思える。
「……さて。気圧されるのはわかりますが、調査を開始しますよ?」
「「「「「 はいッ!! 」」」」」

 と、そうして調査が始まったものの……やはりというか、あの冒険者たちの言葉どおり『門』を開ける事は出来なかった。
 全員での力押しから、実は横にスライドする可能性、上に動く可能性なども念のために調べたものの、あらゆる方向にもビクともせず。
 そして破壊しようにも『門』自体が尋常では無く硬い素材で出来ているらしく、使用した武器や工具の方が壊れるという有様。
「――団長。精霊術の方は?」
「……無理ですね。効かないというより……無効化されているというか、届いていない様な感覚があります。威力があれば突破できるのか、完全無効化かはわかりませんが」
 硬過ぎて、物理攻撃では傷を付けることすらできず。術は謎技術により無効化。
 しかし逆に言えば――術を無効化している技術を突破できれば、単純な硬度の問題で無効化されている物理攻撃より、可能性が高いと言えるかもしれない。
「ならば――やはり我々がやってみましょう……!」
 そう言って前に出てきたのは、レオナルド率いるMZT隊の全裸マンたち。
 異性が居ようと当然のように最後の一枚を脱ぎ捨てる様は、完全なる『手遅れ』を感じさせるが――彼等の攻撃が最大火力である事も事実。

「よし! 今度は雷でイクぞ!!」
「「「「「 光を(まと)って全裸でドーン! 待ってて幼女たち……ッ!! 」」」」」

 ――むしろ逃げて幼女たち。
 心の中では全員がそんなツッコミを入れたと思われるが、術自体は強力極まりなく。
 雷光を纏っての突撃は、高威力の術と物理の複合攻撃。

 広場を轟音と閃光が埋め尽くすが――それらが収まった後。そこには変わらず、傷一つ無い門が静かに佇んでいた。

 と。全員に諦めの雰囲気が漂いだしたとき。
「――くッ。これでも無理だというのか……」
 そんな愚痴ともつかない事を呟きながら。MZT隊の一人がヨロヨロと、門の横の――台のようになっている所に腰掛けようとしたとき――

『管理権限保有者の反応を感知。解析します――』

「「「「「 …………はい!? 」」」」」
 突如として『門』から聞こえてきた声。見ると……隊員が触れた所が光を放っており。――ほぼ全員が驚きの声を上げたが、門の声は構わずに続き――
『第四級管理権限と確認。現在、非常事態警報発令中により、開門には上位権限保有者が必要となります』
 呆然とその声を聞き、対応に苦慮していると――光も消え、再び静寂が戻った。
「……シ、シャベッタ!? 俺のケツ乗っけたら喋った!!」
「――だ、黙りなさい! ……これは、音声で案内をする魔道具、なのでしょうか? ……誰でも構いません、先ほどの場所を触ってみてください!」

「「「「「 ……ケツで? 」」」」」

「…………と、とりあえず普通に手で触ってみてください!!」
 リリー嬢の指示に、一応全員が試してみた結果……手で大丈夫だったらしく。それで反応が出たのは約半数。その共通点は『代々イグニーズに住んでいた者』。
 そして、その反応が出た者も全て『第四級管理権限』だった。
「……これは、急いで報告が必要ですね。今は――夕刻、といったところですか。間に合うかもしれませんね。――私は転送珠で一時帰還し、報告をして参ります。……レオナルド。私が不在の際の指揮は任せますが……大丈夫ですね?」
「はっ、お任せください!」
「…………分かりました、お任せします。――そう時間を掛けずに戻るつもりです。皆さん、くれぐれも警戒を怠らない様にしてください。――では」
 自信満々に『お任せください!』と言った筆頭変態レオナルドに、少々不安そうな顔をしていたが――結局は任せる事にして、リリー嬢は転送珠の光と共に転移していった。

 リリー嬢の姿が消えてから、MZT隊の全裸隊員の一人が再び門を起動させ。
『第四級管理権限と確認。現在、非常事態警報発令中により――』
「……はぁ。ったく、案内用の魔道具っていうなら、もう少し親切に応対してくれてもいいだろうに。――壊れているだけだったりしないだろうな?」
 同じ音声の繰り返しに、いい加減うんざりしてきたらしく。投げ槍気味にそう言うと。

『――応対システムに異常はありません。正常稼働中です』

「「「「「 ……はい? 」」」」」
 呟きに、予期せぬ応答があった。
「か、会話ができるのか!?」
 そんなレオナルドの言葉に、『門』は感情を感じさせない口調で応え。
『私は、情報検索システムに学習機能が組み込まれ構成されております。機能維持に精霊力の循環を用いられており、分類は【人工精神】または【疑似精霊】となります』
 ……理屈など分からないが、要は古代のスゴイ技術で出来た、会話が出来る門、という事なのだろう、多分。
「――ったく、話せるなら話せると早く言えよ! 散々無駄な働きをした俺たちの苦労、少しは考えないのか、ああッ!?」
 ……一人が、そんな理不尽な事を言いだした。
 気を張っていた所で急に進展があったため、妙な方向にテンションが上がってしまっているのだろう。
『――その発言に対する回答を、学習システムより検索中。少々お待ちください――』
 誰かが注意するより早く、男の言葉に『門』が反応を示した。
 この場に居る全員が、どういう回答が来るのかを期待と不安が半々で待っていると。

『検索完了。【――じゃあ、三千年ぶりに話しかけてきた人間が全裸の変態集団だったこちらの心情は、考慮してくれるのですね?】』

「「「「「 ………… 」」」」」
 おそらく全員、少し想像したのだろう――『目を覚ましたら全裸集団』という悪夢を。
 全員が微妙な顔になった所で、『門』がさらに続けた。

『――追加検索完了【――野郎にケツ乗っけられて目覚める気分、わかりますか?】』

「「「「「 すみませんでしたッ!! 」」」」」
 その言葉に、文句を言った男のみならず全員が即座に土下座を決めた――

 ……しかしこの『門』、実は中々面白いキャラかもしれない。
 おそらく我々は、もうしばらくココに留まる事になるだろうし……少し、親睦を深めてみるのも面白い――か?



   ◆◆◆次回更新は2月21日(火)予定です◆◆◆

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