第四編 一章の3

作者:緋月 薙

一章の3   未来への話と秘密の話(3)
(※今回は 間章 祝いの宴と獣の目覚め と合わせて2話分の更新になります)



SIDE:イリス


 おとうさんとおかあさんが結婚するので、お祝いをしようっていうお話になって。
 だからまず、リーゼちゃんのおとうさんとおかあさんの所にきましたっ。

「――ふむ。それで、お祝いをして驚かせようって話か――面白いじゃないか。ウチも世話になってるんだ、是非とも一枚かませてもらおう」
「ありがとう、お父さん! それで――どうすればいいと思う? こっそり準備するなら、ウチのお店を会場にするのがいいと思うんだけど……」
「そうねぇ――一番手っ取り早いのは、代金は全部ウチ持ちで騒いで貰うっていうのだけど……さすがにそれは無しよね……」
「……うん。それやると兄ちゃんたち、絶対に気にすると思う。『負担かけちゃってすみません』って。あんまりそういうの、感じさせたくはないかな」
 エリルくんが言ったみたいに、誰かだけにお願いするっていうのは、なにかちがうと思います。……きっと『お祝い』は、みんなで力を合わせてやったほうが楽しいし、おとうさんたちも喜ぶと思うんです。
「とはいえ参加者に割り勘してもらう形にすると、ウチが(もう)かっちまうからな……。ならばウチは原価価格で料理と、酒も含む飲み物を提供。プラスで料理数点サービス、ってあたりが無難と言えば無難か?」
「……ん、じゅうぶんだとおもう。ありがと、おやじさん」
 やっぱり、リーゼちゃんのおとうさん、おかあさんに相談してよかったです。
「じゃあ、いつやろうか? きょうは無理だけど……早いうちがいいよね?」
「そうだね、イリスちゃん。だけど……自警団の人たちにも声を掛けるから、明日も止めた方がいいんじゃないかな?」
「あー、そっか。撤収作業とか転移陣の設置とかで、今日いっぱいは掛かるって言ってたっけ。明日だと大変そうだよな」
 たしかに、お疲れの人はあんまり楽しめない気がします。
 だけどお話だけは、しておいたほうがいい気も?
「そうね……なら明後日でどうかしら? その日とその翌日、ウチはお休みする予定だったから、いろいろと手間が省けるのよ。だから、予備日でその翌日、ね?」
「良いと思うけど……それで大丈夫なの? お母さん、お父さん、何か用事があったから、お休みにしたんじゃないの?」
「はははっ。本来はお前たち、そこら辺に帰って来る予定だったろ。だから休ませるために店も休業日にしといたんだよ。――エリルの家も、そうするって言ってたぞ?」
「……うちの父ちゃん、機嫌悪そうに『仕事の都合だ』って言ってたけど――」
 ――きっと、照れ隠しだと思います♪ あんまりお話ししたことはありませんが、エリルくんのおとうさんとおかあさんも、とっても良い人です。
「じゃあ、明後日っていうことで、自警団の人たちにお話ししてこよ? ――リーゼちゃん。自警団の人たち、かえってきてるかわかる?」
「あ、ちょっと調べてみるね。――うん。全員かは分からないけど、詰所に人がたくさん居るから大丈夫。あと……この感じ、多分リリーさんじゃないかな?」
「ほんと? じゃあ、わたしがみてみるね」
 リーゼちゃんには、生き物などのいる場所を知る力があります。
 その場がみえるわけではないので、どれが誰かはわかりにくいそうなのですが、やろうと思えば街全体の人の場所がわかるそうなので、とってもスゴイです!
 わたしは狭い範囲ですが、精霊術でとおくの場所をみれるので、リーゼちゃんがしらべた場所を精霊さんにお願いして確認ですっ♪
「――あ。リリーさん居たよっ! ウィルの力もかりれば、このままお話しできるけど……どうする?」
「あれは突然だとビックリするみたいだから……今は止めておこう?」
 実は……ためしたら出来ちゃって、わたしもびっくりしたのはナイショですっ!
「でも、すれ違いになったら面倒だよな。リーゼ、リリーさんの気配(?)を、しばらく見てる事って出来るか?」
「うん、大丈夫。――イリスちゃん、今リリーさん、どこに居る?」
「一階のおくの部屋の、窓の近くだよ」
「えーっと……うん、やっぱりコレがリリーさんなんだね。――うん、大丈夫」
「じゃあ行こう……っと。出かけるならリースとウィルも、連れて行くか……?」
「うんっ、そうだね! じゃあ――風の精霊さんにやさしく起こしてもらうね?」
 もちろん、わたしたちが起こしてもいいんですが、精霊さんの風で起きるのは、とっても気持ちがいいんです♪
「ん、じゃあ、むかえにいこう?」
 そうして、わたしたちはリーゼちゃんのお部屋にむかいます。

 ……後ろから、リーゼちゃんのおとうさんとおかあさんの声が聞こえてきました。
「なんつーか……便利だよな、あの子らの能力……」
「――あれを『便利』の一言で済ませて良いものなのかしら……?」
 ……さすがに、とっても便利に使いすぎてる気は――ちょっとしています。

 ――コンコンってノックしてから、リーゼちゃんがゆっくりとドアを開けます。
「……リース、起きてる?」
「ウィル……? お出かけするよー……?」
 つづいてわたしも、そっと声をかけながら中をみると。
「みぎゃ……?」「みゅ……?」
 どっちもちょうど起きたところだったみたいで、ちょっと『ぼー』っとしたようすで、きょろきょろしてます。
 それから揃って『んー……っ』ってノビをして、『ふあぁ……』ってアクビして――
「――み? みぎゃ♪」「――みゅ? みゅうっ♪」
 顔をあわせて、おたがいに『おはよ♪』って言いあいました。
「いつも仲良しだね、ウィル、リース。これからお出かけするから、いっしょに行こ?」
「みぎゃあっ♪」
 元気にお返事して飛びついてきたウィルを抱きとめると、そのまま甘えてきました。
「みゅぅ……?」
 リースは、エリルくんとリーゼちゃんをみながら、なにか考えてるみたいです。
『どっちに抱きつこうか』でしょうか? ――あ。でもきまったみたいですっ!
「みゅうっ♪」
 リースはリーゼちゃんに抱きついて――あれ? そのまま、エリルくんの方をみて?
「みゅう、みゅっ♪」
「え、えっと――『撫でてっ♪』だって……」
 ちょっとあかいお顔で言うリーゼちゃんですが、正しくは『おとうさん、撫でてっ♪』です。なんで言わなかったんでしょうか?
「あー、はいはい。――これでいいかな、お姫様?」
「みゅうぅ♪」
 エリルくんが少し困ったみたいに笑いながら、リーゼちゃんが抱っこしているリースを撫でると……とっても嬉しそうな鳴き声をあげました。
「え、えっと……そろそろ行こう? リリーさん、移動しちゃうかもしれないし」
「ん。そう、だね。――いこ?」
 なんだかお顔がまっかのリーゼちゃんの言葉に、わたしが抱っこしているウィルを撫でていたアリアちゃんがこたえて。わたしたちはお出かけすることにしました。

「――じゃあお父さん、お母さん。行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
「おお。リリーさんに、話し合いは時間が空いた時でいいって、言っておいてくれ」
「はい、ちゃんと伝えておきますっ。……おとうさんたちのこと言ったら、自警団の人たちビックリするかな?」
 自警団の人たちの驚いた顔をみるのが、ちょっと楽しみです♪
「あー……それは、あんまり期待しない方がいいかもなぁ。――あの二人はとっくにデキてると思っている奴、結構居るしなぁ……」
 ……ちょっとガッカリです。――だけど、知らない言葉がでてきました?
「えっと……『デキてる』?
ってどういう意味ですか?」
「へ? ああ、っと……恋人同士になっているというか――男女が一定以上の仲良しな関係になってる事、か……?」
 えっと……なんとなくわかりました! それなら――

「じゃあ、エリルくんとリーゼちゃんは『デキてる』だね♪」

「い、イリス!?」「イリスちゃん!?」
 ……あれ? 二人がまっかになって?
「えっと? わたし、なにか間違えちゃった、エリルくん?」
「こ、ここで俺に振るの!? え、ええっと……ッ!?」
 まっかなお顔でアタフタしているエリルくんを、なぜかリーゼちゃんは期待しているみたいな眼でみてるし、リーゼちゃんのおとうさんは――……ふえっ!?

「あぁあん!? デキてんのか、いねぇのか、ハッキリ答えろやワレェッ!?」

「ひぃいッ!? は、早く行こうぜ皆……ッ!!」
「う、うんそうだね! 行ってきますお母さんっ!!」
 ……とってもコワイ顔になってしまった、リーゼちゃんのおとうさん。
 わたしたちは、大慌てで逃げましたッ!
「えっと……アリアちゃん。わたし、何か間違えたのかな……?」
「……ん。むしろ、まちがってないから……ああなったんだよ、おねえちゃん」
 えっと、やっぱりあんまりわかりませんが、とりあえず――
「ウィルとリースは、『デキてる』でいいんだよね……?」
「みっ♪」「みゅぅ♪」
 嬉しそうに応えて、手をつないでクルクル飛ぶ、とっても仲良しさんです♪


「――こんにちはっ、リリーさんにお話があってきました!」
 自警団のところにきたので、まずは入口の人にご挨拶ですっ。
「い、イリスちゃん!? ……こほん。団長なら、奥の部屋にいるよ?」
「ありがとうございます♪」
 お礼を言ってから、みんなで中にはいっていきます。
 ――えっと……まずは、おとうさんたちの事を話さないと、だよね?
 いきなり『おかあさん』って言うとわからないかもなので、さいしょは『フィアナさん』って言ったほうがいいかも、です。
 そんなことを考えながらおくに行くと、そのお部屋のドアは開いていて、中で自警団の人たちが、話しあいをしていました。だからわたしは、ノックをしてから――
「こんにちはっ、お疲れさまです♪」
「――あら、イリスちゃん。どうしたんです?」
 リリーさんがわたしに気づいてくれて、ニッコリ笑顔で話しかけてくれました。
 ほかの自警団の人たちは『ざわざわ……、ざわざわ……』ってしていますが。
 とにかく今は、おかあさんたちのご報告ですっ!

「フィアナさんが(おとうさんと)デキちゃって、おかあさんになったの♪」

「「「「「 ぶふぁっ!? 」」」」」
 ……あれ? 自警団の人たちが、いっせいに咳こみました?
「い、イリスちゃん!? それ意味が違――」
 あわてたみたいなリーゼちゃんが言い終わるまえに、リリーさんが。
「――そ、それはいつの事、ですか……?」
 おとうさんたちが、いつ、そういう事になったのか、という事でしょうか?

「きのう、遺跡からもどってすぐ、だって♪ わたしたちがハールートさんに乗せてもらって飛んでるときに、ハールートさんのお家でって。さいしょはフィアナさんからで、おとうさんがお返しして、さいごに『ちゅっ』てしてデキたみたい?」

「「「「「 とっても具体的!? 」」」」」
 みなさん、まっかになって驚いてます?
 ……びっくりした顔はみたかったのですが、なにか違う気がします……?
「あ、アリアちゃん!? 今の証言は……?」
「……はずかしがるおかあさん、とってもかわいかったから……いっぱい訊いた。――おもいっきり、うらめにでてる……」
 アリアちゃんが、なんだか頭痛そうにしてます。大丈夫でしょうか……?
 あれ? あと、自警団の人たちがざわざわとお話しを……?
『遺跡から戻って即とか……』『しかも竜の住処でとか……勇者かよ』『フィアナ嬢から攻めてカリアス殿が反撃……』
 こっちの人たちは、お顔をあかくして……お腹が痛いのかなって格好で。
 むこうの人たちは、リーゼちゃんをみながらお話ししてます。
『結果が即日で分かる……?』『リーゼちゃんの能力で生命反応の探知できるらしいから――』『直後でもわかるのかよ!?』『ムッツリって噂も、そっち方面のエキスパート的な能力から……?』『あー……そりゃあ、ヤった直後がわかるなら悶々と……』
 なんだか、とっても優しい眼をリーゼちゃんに?
「わ、私も巻き込まれて専門家にされてるっ!? ちょっと待ってぇえ!!」
「――イリスの誤解を生む能力、いっそ才能なんじゃないかな……?」
「……ん。おとうさんも、ちょっとそういうとこ、あるよ?」
 なぜか大慌てのリーゼちゃんと……ちょっとだけ離れてお話ししてる、リースを抱っこしたエリルくんと、ウィルを抱っこしたアリアちゃんでした。

      ◆      ◆

「――ああ、そういう事でしたか。安心したような……残念なような……」
「ご理解いただけて……良かったです……」
 なぜかとっても疲れたようすのリリーさんとリーゼちゃん。
 自警団の人たちも、ちょっとフクザツそうな顔で笑っています?
「それで――『ご婚約のお祝い』ですか。そういう事でしたら、喜んでご協力させていただきます♪ ――皆さん、よろしいですよね?」
「「「「「 もちろんです!! 」」」」」
 自警団のみなさんも、今度はとっても楽しそうな笑顔で応えてくれました♪
「……さて、そうなると我々に出来る事は――他に参加を希望しそうな方々への連絡と調整、あとは必要に応じて食材の確保や雑用、あたりですか」
「その辺は、ウチのお父さんと話していただけませんか? 今日・明日なら、空いた時間で大丈夫って言ってましたから」
「はい、そうさせていただきます♪ あとは――」
 そう言って考えるリリーさんに、お願いすることにします。
「リリーさん! わたし『お祝い』で歌いたい。演奏、お願いしたいです……っ!」
「もちろん、喜んで♪ きっとそう言うだろうと思っていましたよ?」
「やったぁ!」
 さすがリリーさんです! なにを歌おうか、今からとっても楽しみです♪
「――私たちも何かしたいんだけど……どうしよう?」
「んー……俺とリーゼは店の手伝いって事にも出来るけど……兄ちゃんと姉ちゃんの事を考えると、アリアをずっと離れさせるのは、なぁ……」
「……ん。おこづかい、だすっていっても、そんなにないし……どうしよう」
「みぎゃぁ……」「みゅぅ……」
 リーゼちゃんとエリルくん、アリアちゃんとウィルとリースも、なにかできないかって考えています。
「ああ、それでしたら。とりあえず、おこづかいの問題は大丈夫ですよ?」
「……え? でも、いきなりおかねもらうのは――だめだとおもう、よ?」
 いくらリリーさんからでも、いきなりいっぱいのお金をもらうのは、なんかイヤです。
「いえ、違います。正当な報酬の話です。エリル君にリーゼちゃん、イリスちゃんとアリアちゃんにも。額の決定はしてないのですが……そこそこの額にはなるかと」
「……へ、俺たちに? なんで?」
「遺跡調査への協力、その成功報酬ですね♪ さらには埋蔵された魔宝石の存在を発見したりと十二分な成果をあげていますし、報酬を出さない方が問題なんですよ?」
「……俺も? あんまり役に立ってた気がしないんだけど……」
「仲間を――リースちゃんを身を挺して守ったと聞きましたが? 命を直接的に守ったというのは、ある意味で最大の殊勲だとは思いませんか? 未来の騎士さま♪」
「みゅうっ! みゅっ♪」
 リリーさんの言葉に、リースも『そうだよ! お父さん♪』って言って、頭をすりすりして甘えています。
「っ! ……ありがとう、ございます」
 ちょっと泣きそうになりながら言ったエリルくんを、みんな優しい眼でみています♪
「――それに、ですね? 今回の事は、あなた方の発案で皆が集まるんですよ? ならば既に、十分以上の働きではないですか」
「……ん。でも……もっとなにか、してあげたい……」
「お気持ちはわかります。ですが、焦る必要は無いのではないですか? 本番は、多分まだ先になるんでしょうし」
「……? ほんばん……?」
「カリアス様とフィアナ様のご婚礼。そのお祝いの席で、何もしないのですか?」
「「「「 ……あっ! 」」」」
 そうでした! 一番お祝いしなければいけないときが、まだ先にありました。
「――今は、心から『おめでとう』と言うだけで十分ではないでしょうか? あなた方が祝福し、側にいてくれる。あのお二人はそれこそを望み、喜ぶと思います。――祝うべき相手が最も喜ぶ事こそ、最良の祝福の仕方だと思いませんか?」
「……ん。ありがと、リリーおねえさん……」
 悩んでいたアリアちゃんもすっきりしたみたいで、にっこり笑ってくれました。
「はい、どういたしまして♪ ……というか、ですけど――」
 リリーさんは、困った人をみる眼でわたしたちをみて……?

「……ゆっくり休めって言われてません? 出来る事が浮かんだとして――まさかガッツリ働いたり練習したり、なんて考えていませんよね……?」

「「「「 ……あっ 」」」」



   ◆◆◆次回更新は8月10日(木)予定です◆◆◆

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