第四編 間章 祝いの宴と獣の目覚め

作者:緋月 薙

間章   祝いの宴と獣の目覚め
(※今回は 一章の3 未来への話と秘密の話(3) と合わせて2話分の更新になります)
(※本章は【書籍第3巻発売記念】 第三編 外伝 その後、何が起きただろうか―― に編集を加え、再調整したものとなります)



SIDE:カリアス


「「「「「 カリアスさん、フィアナさん! ご婚約おめでとうございますっ!! 」」」」」

「――あ、ありがとうございます!」
「……ありがとう」
 夕刻。リーゼの家である食事処に呼ばれ、フィアナと共に行くと。店内の全員から祝福の声が浴びせられた。
 ……戸惑いながらも嬉しく、僕は感謝を伝え。
 フィアナは無感動を装って短く言うが……目を逸らしていて、頬も紅くなっている。どうやら照れ臭いのと――頬が緩みそうになっているのが恥ずかしいらしい。
 それを察した人たちが笑みを浮かべ――そうして、パーティが始まった。

      ◆      ◆

 ステージが終わり、店中から拍手を浴びながら、僕たちの所に戻ってくるイリス。それにフィアナが声をかける。
「お疲れ様、イリス。今日も良かったわよ――わっ、と」
「――ありがと『おかあさん』っ♪」
 フィアナに抱きつき、嬉しそうに『おかあさん』と呼ぶイリス。
『おかあさん』と呼べるようになったのが、よほど嬉しいらしく。先日からこうして、フィアナに甘えるイリスをよく見る様になった。
 僕はイリスをフィアナに取られた様で少し淋しい……という事は全く無く。
「――ん、『おとうさん』。これ、おいしい……よ?」
「っと。ありがとう、アリア。――こっちのお肉、食べるかい?」
「……ん♪」
 自分の方にあった料理の皿を、僕に勧めてくれるアリア。お返しに僕の方にあった料理を勧めると、受け取って、微かに嬉しそうな笑みを見せる。
 ――相変わらず表情の変化に(とぼ)しいアリアだけど、雰囲気や態度が素直で、慣れると分かりやすい。小動物の様な可愛さで、ついつい頭を撫でたくなる。
 ――と、こんな風に。元からフィアナとイリスの次くらいに、僕に(なつ)いてくれていたアリアだけど、最近は同等くらいの距離感になっている気がする。
 そもそもイリスも、別に疎遠になったわけではなく、僕への態度も以前どおり。
 つまり――二人とも、より子供らしく甘えてくる様になった、という事で。
「みぎゃっ!」
「っと。大丈夫、君の事も忘れてなんかいないよ。――これ食べる?」
「みっ♪」
 僕の肩に乗っているウィルが『ぼくも居るよっ!』と自己主張。
 当然、ウィルも僕の大事な『子供』。頭を撫でながら果物を勧めると、嬉しそうな声で受け取り、僕に頬ずりをしてきた。
「――ん、だいじょうぶ。ウィルはわたしの、おとうと。わすれたりなんて、しないよ?」
「みぎゃあ♪」
「……そういえば兄ちゃん? ウィルって――イリスと兄ちゃんが親、だよね? で、イリスの妹がアリアで、その弟が、またウィル……?」
 ……『あれ?』と、エリルの首を傾げながらの言葉に、思わず苦笑いが浮かぶ。
「うん、まぁ……いいと思うんだ。少しややこしいけど――要はウィルも大事な家族っていうだけの事だから。――ね、イリス?」
「うんっ! ウィルはだいじな子どもで――とってもカワイイおとうと、だよ♪」
「みぎゃあっ♪」
 僕とイリスの言葉に、ウィルは嬉しそうな声をあげて甘えてきた。
「みゅぅ……みゅっ!」
「――うん? どうしたの、リース?」
 休養日明けという事もあり、お客さんもいっぱいで、張り切って働いているリーゼ。
 そんなリーゼがちょうど追加注文の飲み物を運んできたところで、エリルの膝の上に居たリースが声をかけたみたいで。
「みゅ、みゅうみゅうっ」
「え? 『わたしも、弟か妹がほしいのっ』? ――でも、そんなに竜の卵が見つかるわけ――え? もしかして……?」
 ……リースの言っている事に思い当たったらしく、徐々に頬が紅くなっていくリーゼ。
 そんなリーゼに黒い幼竜は、一回エリルの方を見てから――
「みゅう、みゅっ♪」
「っ――!? あ、こ、これ注文の飲み物ですっ! ちょっと顔を洗ってきます……っ!!」
 ……どうやらダメ押しをもらったらしく、慌てて注文の品を置いて去って行くリーゼ。
 ――あれ? 僕が注文したお茶が、二つ……? まぁ、戻って来たら言えばいいか。
 どうやら慌てて、他のテーブルに置くはずの物も置いて行ってしまったらしい。
「……おねえちゃん。リース、なんて言ったの……?」
「えっと……『がんばって、おかあさんっ♪』って。なんでリーゼちゃん、慌てちゃったんだろう? エリルくんのほうも見てたけど……わかる?」
「ッ!? ――あ、あははははッ、なんでだろうなあっ!?」
 一方で、僕とフィアナはというと。
「「 ……………… 」」
 とりあえず、飛び火を恐れて食事に集中。だけど――
「……ん、おかあさん?」
「っ!? な、何かしら……?」
 アリアが無邪気――と思える様子で話しかけ。それにフィアナが応えると。
「……わたし、おとうとでも、いもうとでも、だいかんげいだよ?」
「うんっ、わたしも!」「みぎゃあっ♪」
「ふえっ!? ……え、えっと、その…………」
 アリアの言葉にイリスとウィルも乗っかり。
 フィアナは真っ赤になって俯いてしまい――時々、こっちをチラチラと見て……。
 ――『何故か』とは言わない。だから……僕も頬が熱くなっているわけで。
 助け舟を出してくれる人は……と、周囲を見回すも――ダメだ。周りの人たちは尽く目を逸らしているか……『何気なく口に入れた物が激甘だった』みたいな顔をしている。
 ――と、とりあえず一回、お茶でも飲んで落ち着こう、うん……!
 そう思い、リーゼが運んで来た飲み物のグラスを掴み、一気にグっと――

「――すみませんっ! さっきこのテーブルに、お酒を――あっ!?」

 …………え?
 どうやら、さっき置いて行った『一つ多かったお茶(に見えた飲み物)』は、お酒だったらしく。そして――なぜか僕を見て『あっ!?』って言った。
「……え? ――しまった! カリアス大丈夫!? ――カリアスっ!」
 そんな、切羽詰ったフィアナの声を聞きながら、僕は――

      ◆      ◆

「ん――朝……?」
 いつもの様に、自室で目を覚まし……あれ? 僕、昨日はいつ寝たっけ?
 昨日はリーゼの店でパーティを開いてくれて……アリアたちの『弟か妹』の話で慌てて――間違えて、酒を飲んじゃって……?
「……おはよう、カリアス。――大丈夫?」
 不意に名前を呼ばれ、その声の方向に顔を向けると――フィアナが、ベッドの脇に置いた椅子に座り、こちらを見ていた。
「…………おはよう、フィアナ。――今、時間はどれくらい?」
 返事を返すまで少し長めの間が空いたのは――『寝起きに愛しい女性の声を聞けるのは、想像以上に嬉しい』などと思ってしまい、少し照れくさかったからだったりする。
 ――うん、起き抜けとはいえ……重症だね、我ながら。
「『朝』より『お昼』の方が近い時間ね。それで――昨夜の事は、覚えてる?」
「……うん、覚えてるよ。僕は間違えて酒を飲んで――卒倒しちゃったんだよね?」
 この国で、飲酒が許されるのは15歳から。
 初めて飲んだ……もとい、養父さんに飲まされた時も、口にした後の記憶が無い。
 ただ養父さんが『お前は酒が弱いみたいだから、飲まない方がいい。……いやマジで。周りの人間のためにも』と言っていた。――確かに、倒れれば迷惑だろう。
「…………え、ええ、そうよ? バタッといったのよ、バタッと!」
 ……なぜか間が空いた上に、妙に念を押す様に言ってくるフィアナ。
 疑問には思うけど――とにかく今は起きなければ。十分に寝坊してしまっているし。
「――カリアス、起きて大丈夫なの?」
「……うん、多分。なぜか腹部に、強打されたみたいな痛みがあるけど――」
「そ、そう? ふ、不思議な事もあったものねぇ!?」
 何故か目を逸らしながら動揺しているフィアナを怪訝に思いながらも、ベッドから降りようとすると――フィアナも立ち上がり、支えようとしてくれて。
 その事を嬉しく思いながらも……まだ酔いが残っているのか、心の中の狼さんが『……俺の出番?』と顔を出したけど――なんとか振り切り、一人で立ち上がる。
「――大丈夫だよ、フィアナ。この通り……と、とっとと……っ!?」
「え? ちょ、カリアス――きゃっ!?」
 ……立ち眩み。思わずよろけて、何とかフィアナを巻き込まない様に踏ん張ろうとするも――フィアナはフィアナで、僕が倒れない様に引っ張ったみたいで。
 結果、僕はバランスを崩し――見事にフィアナを巻き込み……押し倒す形で、ベッドに倒れ込んでしまい――
「「 ………… 」」
 そのままの体勢で、思わず黙り込んでしまう僕とフィアナ。
「……え、えっと――イリスとアリアは……?」
「え、ええ……リーゼの所に、遊びに行ったわ。……ウィルも、一緒」
 とりあえず何か話さなければと、会話を交わしてやや落ち着くも――なぜか状況は変わらない。なぜかフィアナは、僕を退かそうとしないし……僕も、退こうとしない。
「……そっか。じゃあ――少しゆっくり出来る……かな?」
「…………(こくり)」
 頬を染めて、だけど真っ直ぐな眼で僕を見るフィアナを、とても綺麗だと思った――

(SIDE:アナザーズ【少し時間は戻り――】)

 エドです。
 カリアス嬢とフィアナ殿の婚約祝賀パーティという事で、リーゼたん家の食事処に来ています。自警団の一部も、当然一緒です。
 祝いの席という名目で、食事しながらイリスたんやアリアたん、リーゼたんを間近で観察できるという、なんとも素晴らしい席だったのだが……どうやらトラブル発生の模様。

 お子さんの話から、フィアナ嬢が恥ずかしがりながらも満更でもない雰囲気でカリアス殿をチラ見すると言う、独り身には拷問級の甘い空気を放出したかと思えば――
「――しまった! カリアス、大丈夫!? ――カリアスっ!」
 フィアナ嬢の切羽詰った声に目を向けると――カリアス殿は、ただボーっと中空を見つめていて。
 店中の視線が集まる中、先ほどのステージで演奏していた楽器を片づけてきた、自警団団長にして、歌姫イリスたんのパートナーたるリリー嬢も駆けつけてきて。
「ふ、フィアナ様!? カリアス様はどうなさったんですか!?」
「カリアスが間違えてお酒を飲んじゃったの! おじさまの話だと、もの凄く弱いはずなのに一気に……っ!!」
「……『弱いはず』? フィアナ様は、飲んだ所を見た事はないのですか?」
 怪訝そうに言葉を返すリリー嬢。それに応えるフィアナ嬢の顔に浮かぶのは――焦燥。

「確かに見た事はないけれど、おじさま――カリアスの養父からいつも言われているのよ、『くれぐれも……カリアスに酒を飲ませないでくれ。いやフリじゃなくマジで……マジでヤバイから――』って……!!」

「「「「「 聖殿騎士団長が危険視するレベルの酒癖ッ!?
」」」」」
 ……先日この街に来た際、俺たちも接する機会があり――少々残念な一面を知っているとはいえ、聖殿騎士団長とは、国のナンバー2にして、単体戦闘能力は国内最強。
 そんな人物が『マジでヤバイ』と言う脅威が今、我々の目の前に……?
「――んー……?」
「「「「「 ――ッ!? 」」」」」
 そんな時、ひたすら無反応だったカリアス殿が、まるで寝起きの様な声を出し。
 全員が『ビクぅッ!?』と反応する中、声を掛けたのはフィアナ嬢。
「カリアス! 大丈夫!?」
 緊張感あふれるフィアナ嬢の声に、カリアス殿は真面目な顔になり――

「――らいりょうぶ、らよ?」

「「「「「 ――あ、ダメだ 」」」」」
 全員が即座に『大丈夫ではない』と判断できる程に、ベタな酔いっぷり。
 全員が警戒態勢に入る中、今度はイリスたんが話しかけ――
「……お、おとうさん? わたしが分かる……?」
「――んー? うん、もちろんわかるよ? イリスはカワイイなぁ……」
 恐る恐る訊いたイリスたんに、カリアス殿は頭を撫でながら言い――
「――でもぉ、イリスもいつか、お嫁に行ったりしちゃうんだろうなぁ……」
 ……徐々にカリアス殿の目が座ってきて、徐々に不穏な気配が……?

「――よし、世界を滅ぼそう。きっとハールートも協力してくれる」

「「「「「 有り得ないとは言い切れないから止めてッ!?
」」」」」
 ……無いとは思う。無いとは思うが……!
 仮に――『イリスとアリアが「お嫁にいきます」とか言い出す前に、世界を終わらせません?』等を、あの爺バカ古竜殿に言ってしまった場合――かの守護竜殿のメンタル状態によっては『うむ、ヤルか』となる可能性も無いとは言えない気がする……!!
 一部――イリスたんやアリアたん、幼竜たち等が『
? 』と首を傾げている以外、ほぼ全員が戦慄を覚えている中、さらにカリアス殿が動き出す。
 周囲の匂いを嗅ぐようにしながら、周囲を見まわし――

「――幼女趣味者の匂い。……やっぱり世界を終わらせよう」

((((( ――探知能力までっ!? )))))
 ここには少なくない人数の自警団員という名の親衛隊員(=ロリコン紳士)が居るのに加え、我々の性質に気付いている者も存在。更にほぼ全員が大なり小なり、健全なり不健全なりの好意を、女神様たち(イリスたん、アリアたん、リーゼたん)に抱いている。
 ゆえに……多くの者が『やっべ、言い逃れできねぇ!?』と――
「――だけど、この場にはハールート居ないし、さすがに大した破壊活動は出来そうにないかな……。止めておこう――」
((((( ……ほっ)))))
 全員が、安堵の息を吐いた――

「――などと言うと思ったか愚か者め」

「「「「「 あんた本当にカリアス殿かっ!? 」」」」」
 邪悪な笑みで言うカリアス殿に、全員が叫ぶ。
 ……酒精と共に、どこかの魔王か何かの魂まで入ったのではないだろうか?
 そこまで考えた所で、頭の中に某両刀魔王から思念波で『呼んだかぁい?』と届いたが、必死に『呼んでません!』と回答。これ以上のカオスは要らない。
「くっくっく……聖術と闇聖術の融合――神域の力にて全てを滅す――『裁きの極光よ。深淵の闇よ――』」
 ――な、なんかヤバ気な詠唱が始まった!?
 本当に何かヤバいモノが取り憑いているのではなかろうか?
 高まる危機感と妙な圧力に、皆が逃げるか止めに入るかで決断を迫られる中――真っ先に動いたのは、流石は相棒にして婚約者というべきか、フィアナ嬢。

「――やめなさい、カリアス! あんたの大切な人たちまで吹き飛ばすつもり!?」

「 っ! ……フィアナ……?」
 フィアナ嬢の一喝に、詠唱を止めるカリアス殿。
 そのまま、フラフラ~っとフィアナ嬢に近づき、その両肩に手を置き。
「え、えっと……か、カリアス……?」

「――フィアナ。子供をつくろう」

 ド直球な爆弾が投下された。
「……え? ――ふ、ふええええええええっ!?」
 瞬時に顔が真っ赤になるフィアナ嬢に、至って真面目な顔のカリアス殿(状態:泥酔)。
「――今までだって狼さんにならない様に我慢していたけど、もう我慢する理由も無い。イリスとアリアも望んでいるし……子沢山の家族には憧れていたから――」
「か、カリアス……」
 真面目な顔(だけど泥酔)で迫るカリアス殿に、潤んだ瞳を向けるフィアナ嬢。
 ……先とは違う絶大な緊張感で皆が見守る中――フィアナ嬢が、ついに動きだす。
 自分から距離を詰め、踏込み、拳をカリアス殿の腹部に――って、え……?

「――こ、こんな所で、何言ってるのよぉッ!!」
「ごふっ!?」

「「「「「 ここで当て身!? 」」」」」
 ズンッ! という鈍い音と共に、フィアナ嬢の拳がカリアス殿の腹部にめり込んだ。
 展開に付いて来れていない者を除く、ほぼ全員が声を上げたが――当事者には届いていない様子で。
「――い、いい? カリアス。そう思ってくれるのは嬉しいし、その……私も、吝かではないと言うか……だけどね? そういうのはもっと、ロマンティックな所で――」
 今度は逆に、フィアナ嬢がカリアス殿の両肩を掴み、ときどき『きゃーっ!』とかいった様子で前後に揺すっていたりするのだが……。
「あ、あの、フィアナ様……? カリアス殿はグッタリしていて、どうやら意識が無いように思われるのですが……?」
 リリー嬢が、興奮状態のフィアナ嬢に、慎重に話しかけるが――どうやら耳に入っていない様で、グッタリしたままのカリアス殿は、尚も揺さぶられ続け――

「……もしかして、フィアナ嬢も酔っているのだろうか?」
「その様ですね……お酒、以外の何かに」

 その後、フィアナ嬢は正気を取り戻したものの……カリアス殿の意識は戻らず。
 数人でカリアス殿を教会の自室に運び――解散となった。

 とりあえず、酒は怖いと改めて認識。
 そして――『カリアス殿には、絶対に酒を飲ませてはならない』という認識が、イグニーズの街中で共有される事になった――


SIDE:イリス

 お祝いのパーティがあった、つぎの日。
 今日はアリアちゃんと、リーゼちゃんのお家にきています。
「おとうさん、だいじょうぶかな……?」
「……えっと、おかあさんがついてるから、だいじょうぶだとおもう……よ?」
 今日はリーゼちゃんの家のお店はお休みなので、キッチンを使わせてもらって、リーゼちゃんとアリアちゃんといっしょにお料理の練習です。
 ウィルもいっしょにきていますが、今はリースとお昼寝中。エリルくんはお家のお手伝いで、今日はこれないそうです。

 それで――きのうのパーティで倒れちゃったおとうさんが、ちょっと心配です。
「怪我は……フィアナさんのアレ以外は無かったし、闇聖術で精神方面も異常が無いって確認したし――大丈夫だと思うよ? イリスちゃん」
「うん。えっと――おかあさん、も、『寝てるだけ』って言ってたけど……」
 フィアナさんを『おかあさん』って呼べるようになって、とっても嬉しいんですが……まだ慣れていないせいか、ちょっと照れてしまいますっ。
「それで――無事に起きたら、教えてね? 私、謝りにいかないといけないし……」
「……あれは、しかたないっておもう、よ? リーゼおねえちゃん」
 おとうさんが倒れてしまうキッカケになったお酒は、リーゼちゃんが間違えて置いてしまったものなので……リーゼちゃんは、ちょっと責任を感じているみたいです。
「そういえば……リーゼおねえちゃん? きのう、あとでおもったんだけど――」
「え? なあに、アリアちゃん?」
「……おとうさん、が、よっぱらったとき。『闇聖術』で解毒、できなかった……?」
「…………あっ」
 そういえば、おとうさんとリーゼちゃんが使える『闇聖術』には、身体の中の毒を消したり、病気を治す術がありました――あれ? それならば……。
「……わたしも水の精霊さんにお願いすれば、体の中のお酒を消せたかも……?」
 精霊さんに訊いてみると――『出来るよ~』ってかえってきましたっ!
「「 ………… 」」
 わたしとリーゼちゃんは、顔をあわせて……ちょっと落ちこみました。
「……え、えっと……そうだ、リーゼおねえちゃんっ。『能力』で……おとうさん、おきてるか、わかる……?」
 お話をかえようとしてくれたらしいアリアちゃんが、リーゼちゃんに。
 リーゼちゃんは封印がとけてから、生き物や魔物の場所がわかる能力があります。
 その能力をつかえば、おとうさんがうごいてるかは、すぐにわかるはずです!
 ……あと。アリアちゃんも『おとうさん』って言うのが、まだ少し恥ずかしいみたいで。『おとうさん』って言うときにちょっとだけ赤くなるの、カワイイです♪
 わたしが『おかあさん』って言うときもですが――本人に言うのはだいじょうぶなんですが、居ないところで言うのは……なぜかちょっと恥ずかしいんです。
「えっと……うん。動いていれば分かるよ? ちょっと待ってね――確かカリアスさんの部屋はあっちだから…………え? …………ッ!」
 ……あれ? おとうさんの場所を調べたリーゼちゃんが『え?』って言ったあと――きゅうにお顔がまっ赤になりました?
「――リーゼおねえちゃん? どうした……の?」
「え、えっと……カリアスさんはお部屋に居て、一緒にフィアナさんも居るみたいなんだけど――」
 わたしたちがお出かけするとき、フィアナさんは『カリアスを見てる』って言っていたので、別におかしくはないと思いますが……?
 アリアちゃんと『 ? 』ってやっていると、リーゼちゃんは赤いお顔のままで。

「――カリアスさんとフィアナさんが、『同じ座標』に居るんだけど……」

「……あっ…………」
 アリアちゃんも分かったみたいで、ちょっぴり赤くなって、眼をそらして……?
 えっと……『同じ座標』っていうことは、くっついている、ということです?
「おとうさんと……おかあさん、とっても仲良しっていうこと、だよね?」
「う、うん、そうだね! 仲良しは間違いないよイリスちゃんっ!」
「……ん。……とってもなかよしだから……『おとうと』か『いもうと』、おもったよりはやく、できるかも……?」
「ほんとっ!? やったぁ♪」
『おとうと』や『いもうと』がふえるのは、とっても嬉しいです♪
 なんでそうなるかは分かりませんが――あ、でも。もしかしたら……?
「えっと……風の精霊さんっ!」
 『――イリスちゃん、呼んだ~?』
 わたしが呼ぶと風があつまって――みどり色のちっちゃな子、風の精霊さんが姿をみせてくれました。
「風の精霊さんっ。おとうさんがちょっと心配なんです。教会の中ですが、みることはできますか?」
「イリスちゃん!?」「っ! お、おねえちゃん、まっ――」
 『えっと……窓とか閉まってると、ちょっと難しいかなー』
 風の精霊さんが『ごめんね』っていう感じで言いました。
 なぜか、精霊さんが『難しい』って言ったら、リーゼちゃんとアリアちゃんが安心したみたいに息をはきましたが――え?
『難しい』?
「……出来ない、わけではないんですか?」
 『うん! ウィルくんの力を借りるか、【転送珠】があれば、多分できるよ?』
 ウィルはまだお昼寝中なので起こしたくないですが、転送珠なら大丈夫です♪
「転送珠は大丈夫なのでお願いします♪」
「「 ッ!? ま、まって―― 」」
 『いいよ♪ ちょっと待っててね?』
 リーゼちゃんとアリアちゃんが、なぜか慌てていますが……風の精霊さんは気にせず、わたしがだした『転送珠』にさわって、術を始め――

 『うん、これで見せられ…………っ!? ――み、見せられないョ!?』

 ……あれ? 精霊さんがとっても慌てた感じで、手を『
(ダメっ!) 』ってしてます?
 リーゼちゃんとアリアちゃんは、なぜか顔をそらしていますが……。
「えっと――みれなかったんです?」
 『――み、見れたけど見せられないっていうか……そ、そうだ、年齢制限……!』
 術に年齢制限(?)なんてあったんでしょうか? はじめて聞きました。
 わたしが首をかしげていると――あか、あお、きいろの光があつまって……呼んでいませんが、火の精霊さん、水の精霊さん、土の精霊さんもあらわれました。
 『なあ、どうしたんだ?』
 『別に、年齢制限なんて無い……よね?』
 『なんで見せられないの~?』
 風の精霊さんに訊く、火、水、土の精霊さんたち。
 ……リーゼちゃんとアリアちゃんが、なぜだかとっても頭痛そうにしています。
 『え、えっと……こ、これ――』
 どうやら風の精霊さんが、ほかの精霊さんたちにみせているようです?

 『『『 …………ッ!? ――み、見せられないョ!? 』』』

 みんな、さっきの風の精霊さんと同じ反応をしました!?
 『でしょ!? ――それにしても………わぁ……』
 『『『 …………わぁ…… 』』』
 なぜか……精霊さんたちが、教会の方をみて『ぽー……』ってしはじめました?
 そんな精霊さんたちに、まっかなお顔のリーゼちゃんが近づいて。
「……精霊さん。フィアナさんたち……えっと、どんな事に?」
「――リーゼおねえちゃん、やっぱりムッツリさん……」
 アリアちゃんが、ちょっと疲れたみたいに言いますが……アリアちゃんもあかいお顔で、ちょっと興味があるみたいにみえます。
 『……フィアナお母さん、意外に甘えんぼ……』
 『でも最初は、立場が逆だったよ……?』
 『……引っ張っておいて、後で立場逆転って――こういうの、なんて言ったっけ?』
 そんな精霊さんのお話に、リーゼちゃんがさらに顔をあかくして、おそるおそる――

「……さ、『誘い受け』……?」

 『『『『 ――それだッ!! 』』』』
 ……あんまり、お話の内容がわかりません。
「――アリアちゃん。リーゼちゃん、なにを言ってるんだろう……?」
「……ん、そうだね。……おかあさんが、おとうさんにつよきにでるのって、ただのてれかくし、だよ? だから――『誘い受け』じゃ、ないのに、ね?」

 ……たまに、アリアちゃんの言っていることがわからなくなります。

 『と、とにかく! イリスちゃんのお父さんは大丈夫だよ! 元気だよっ!!』
「あ、え、えっと……ありがとう、ございました?」
 ……なぜか、とっても大変な失敗をした気がするんですが……来てくれて、確認してもらえたので、お礼は忘れちゃいけないと思います。
 『じ、じゃあ、またねっ!』
 『『『 またねっ! 』』』
 そう言って、精霊さんたちは姿を消して、帰っていきました。
「「「 ………… 」」」
 ――なぜか、ちょっぴり気まずい空気がながれました。
「え、えっと……と、とにかく! カリアスさんは大丈夫みたいだから、お料理の練習に戻ろう! ねっ!?」
「……ん、そうだね。……あ。リーゼおねえちゃん」
「うん? どうしたの、アリアちゃん?」

「――すっぱいものも、つくれるようになったほうが、いいかな?」

「…………それはさすがに、気が早過ぎるんじゃないかな……?」
 えっと……ふたりのお話の意味は、あんまり分かりませんが――だけど、いつか生まれる『おとうと』か『いもうと』のためにも、今はお料理がんばりますっ!
 ――あ、そうだ!
 今日は帰ったら、おとうさんとおかあさんに『生まれるのは「おとうと」「いもうと」どっち?』って訊くことにします♪



   ◆◆◆次回更新は8月10日(木)予定です◆◆◆

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