第四編 三章の2

作者:緋月 薙

三章の2   不意の来訪者と少女の装い(2)



SIDE:イリス


「……お主等の団欒(だんらん)を邪魔してしまったな。すまなかったのじゃ……」 

 おとうさんは『急いで報告しなきゃいけないから』って、ハールートさん、エルファリアさん、ルイーズさんと一緒に、帰ってしまって。
 飛びさっていくハールートさんとエルファリアさんをみていると……巫女長さま? の、ランカちゃ――ランカさんが、話しかけてきました。
「上空からお主等を見つけた時は、少し時間を潰してから来ようかと、エルファリアと話しておったのじゃ。しかし……見つかるとは思わなんだ。――さすが光竜なのじゃ」
「み? みぎゃっ♪」
 ほめられて、ウィルは嬉しそうです。
 ですが、ランカ……さんは、ちょっと元気無さそうです?
「だけど……あんまりわたしたちに、きかせたくないおはなし、するんだよね……?」
「……なんじゃ、気付いておったのか?」
 アリアちゃんに言われて――ランカさんは、ちょっと困った顔でみまわして。
 わたしたちはみんな『うん』って頷いて――あ。……ウィルだけ『みゅ? みゅ?』ってやってます。リースは『もちろんっ』てお顔です。
 それをみて『はぁ……』って息をはいてから、ランカさんはお話をはじめました。
「……後々イヤでも知らされる類の話とはいえ――子等に、現時点でどこまで伝えるべきか判断できんかったのじゃ……」
 えっと……きょうはエリルくんの儀式が終わったらピクニックだったのですが。
 ランカさんたちが来たから中止になったのを気にしてるみたいです?
「……そういう事でしたら、その気遣いは必要無かったかもしれませんね……」
「――む? 必要無いとは……どういうことなのじゃ?」
 リリーさんの言葉に、首を傾げるランカちゃん……こほん、ランカさん。
 それに答えたのは、おかあさんでした。
「ええ。この子たちは皆、相手次第では前線で戦える子たちなの――ですよ?」
「……ふむ。イリスと――リーゼの事は聞いておるのじゃ。あと……その赤髪の娘と少年も、腕が立つのか? ……ある程度の心得がある、までは分かるのじゃが」
「――ええ。まず赤髪の子、アリアちゃんには、私も教えています。……素質だけでしたら私以上。ここまでの才を持つ者は、叔母上でもそうそう見ていないかと」
「……お主がそこまで言うか。それが本当であるなら――楽しみじゃな」
「……アリアです。――よろしく……おねがいします?」
 いつもマイペースなアリアちゃんですが……さすがに今は、ちょっと口調にまよいがあります。
「それと――そこのエリル君ですが。そんなアリアちゃんと互角に戦え……何より、聖殿騎士の直弟子です。さきほど『聖誓の儀』を終えた所ですね」
「ほぅ、なるほど。それはそれは――」
「え、っと……エリルと言い――申します。よろしくお願いしま……あの、何か……?」
 エリルくんも、やっぱり戸惑った感じでご挨拶しましたが……戸惑っている理由は、わたしたちの理由だけじゃないみたいです。
「……ふむふむ。……ほうほう。うほうほ……。むふむふ…………じゅるり」
「――あ、あのぉ!? な、何でしょうかぁッ!?」
 エリルくんの足下から頭までじーっとみて。それからさらに、エリルくんの周りをぐるっとみて回って……息も荒くなってます? 疲れたのでしょうか?
「――え、エリルくんに何か用!? ……で、ですか……?」
「みゅっ! みゅうぅ……っ!!」
「……むふ? ……む?」
 リーゼちゃんとリースが、あわててエリルくんを庇いましたっ。
 こんなときでも『ですか?』を忘れないリーゼちゃん、スゴイです。
 ランカちゃ――もうランカ『ちゃん』でいいですっ。
 ……ランカちゃんは、エリルくんとリーゼちゃんを交互にみて、ちょっと考えて。

「…………ちっ」

「「 どういう事っ!? 」」
『ちっ』って舌打ちしたランカちゃんに、リーゼちゃんとエリルくんは、そろって声をあげました。……ほんとうに、どういう事でしょう?
「……叔母上。『またですか』――というべきか、『まだですか』というべきか……」
 なんだか……リリーさんは、とっても頭が痛そうです。
「ええっと。どういう事、というか――何事かしら……?」
「――すまぬ、説明するのじゃ。……だが、その前に――」
 ランカちゃんは、周りをみまわして言いました。

「――お主等、なぜ口調が安定せぬのじゃ?」

「「「「「 絶対に理由わかってますよね!? 」」」」」
 ランカちゃんは『巫女長さま』で、リリーさんの叔母なのに……どうみてもわたしたちと同じくらいにしか見えないので、どう扱っていいのか分からないんですっ!
「くははははっ! (わらわ)を初めて見る者は、皆似た様な反応をするのじゃ♪ まぁ、その反応を見て楽しみつつ、同時に人となりを見ておるがな」
「えっと……無礼な人とか、人を外見で判断する人……ですか?」
「外交の場で、そういう輩は最初から論外なのじゃ。逆に低姿勢を全く揺るがせない者が危険じゃな。……少なくとも、仕事以外で付き合いたくはないのじゃ」
「……なるほど。確かに()(つくろ)うのが上手過ぎる人も、感情の揺れが無さ過ぎる人も、人格面ではあまり信用出来ないものね……」
 ……なんだか、とってもオトナなお話です。『さすが巫女長さま』って感じです。

「ま、初手で妾にエロい眼を向けてきおった輩には、奥方の前で『ねぇねぇ、オバサマ?
【今晩一緒せぇへんか? ぐへへへ】ってどういう意味? ランカわからないのぉ』とかやるのも、楽しくはあるのじゃ」

「「 タチ悪っ!? 」」
 またエリルくんとリーゼちゃんの声がそろいました。
「本当に相変わらずですね……叔母上」 
 ……なんだか、とってもオトナなお話です?
「えっと……アリアちゃん、どういう事?」
「――ん。ヘンなヒトはいっぱいいるから、きをつけましょう、っていう、おはなし?」
「うんっ、それなら大丈夫! 気をつけてるよ?」
「…………ん、そうだね。おねえちゃん、えらい、ね?」
 そう言って、背伸びしてわたしの頭を撫でるアリアちゃんですが……その眼がいつも以上に無表情なのは、なんででしょう?
 と。そんなわたしたちを楽しそうにみてから、ランカちゃんが口を開きました。
「――うむ♪ イリス、リーゼ、エリルにアリア、それにフィアナよ。妾の事は外見相応の扱いをする事を許すのじゃ! どうか友として、仲良うしてほしく思う!」
 堂々と、そしてとっても楽しそうに言うランカちゃんですが……。
「えっと……それは、わたしは嬉しいけど――いい……の?」
 ランカちゃんはとっても年上で……リーシアっていう国で一番エライ人です。
 そんな人を同い年あつかいして、いいんでしょうか?
「うむ、流石に公の場では配慮して欲しいのじゃが――問題無いのじゃ。お主等とは、仕事だけの付き合いなどしとうないからのう。……もっとも――」
 そこまで言ったランカちゃんは、おかあさんとリリーさんをみてから。
「――近い内に、そういう場でも問題無くなりそうな気もするのじゃ」
「「 あー…… 」」
 おかあさんたちが、とっても納得した声をだしました。
 ……この前お話しした『行儀作法』、本当に習ったほうがいいでしょうか……?
「――みぎゃ? ……みっ♪」
 とりあえず……今はウィルを撫でて、現実からにげることにしますっ!
「……おねえちゃん。わたしもウィル、なでていい……?」
「うんっ。いっしょに撫でよ?」「みぎゃっ♪」
 向こうで――エリルくんとリーゼちゃんが、ちょっぴり遠い眼でリースを撫でてます。
 ――みんなの心は一つですっ……!
「そんなわけで、妾の方も問題無いのじゃっ! よってお主等の前では、妾はただの『ランカ』。どこにでも居る12歳の少女なのじゃっ♪」
 たしかにランカちゃんは、リーゼちゃんの少し下、12歳くらいにみえます。
 だけど本当は、何歳なのでしょう?
「……叔母上。さすがにそれは……ケタ違いのサバ読みでは? ――文字通りの意味で」
 ――え? ケタ違い、ですか……?
 という事は……120歳です? ――ほんとうに、そんな風にはみえないで――

「それくらいに見えるのだから、諦めるのじゃっ! いいではないか――2ケタくらい」

「「「「「 2ケタっ!? 」」」」」
 まさかの1200歳ですっ!?
「……長命種の『大樹の民』でも、巫女長の家系――ユグドリウス家は特に寿命が長いんです。さらにその中でも叔母上は…………不老不死の疑惑が出てます」
 ――『不老』にも程があると思いますっ……!!
「え、えっと……じゃあ『ランカちゃん』で、いい……のかな?」
「うむっ♪ よろしくなのじゃ、リーゼ!」
「うん♪ よろしくね、ランカちゃん? それで――」
 あらためて、ランカちゃんと笑顔でご挨拶したリーゼちゃん……ですが。途中で、なんだか怖い感じがしてきて……?

「……さっきのエリル君に対する行動は、なんだったのかな?」

「――しっかり覚えておったのじゃ……」
 ランカちゃんは、ちょっぴり誤魔化そうと思っていたみたいですが……エリルくん関係の事をリーゼちゃんが忘れることは、無いと思います。
「まず――安心するのじゃ。お相手が居る子に手を出したりはせぬのじゃ」
「……むしろ、年齢が百分の一の子に手を出そうとするのを止めなさいよ」
 おかあさんが言いましたが、ランカちゃんはかまわず、お話をつづけます。
「……我がユグドリウス家には親族もおり、後継者候補は居る。よって妾が生涯独身でも問題は無いのじゃ。――無いのじゃが……婿は欲しいとも思うのじゃ」
「……叔母上、親族から『不動の行かず後家』などと言われていましたから……」
 ランカちゃんとリリーさんが語る姿は……とっても痛々しい感じです。
「だけど……お見合い話とか、いくらでも入ってきそうだけど?」
「うむ。そこそこの数が来たぞ? じゃが……ここで問題なのじゃ――」
 首をかしげて訊くおかあさんに、ランカちゃんは……瞳の輝きがきえましたっ!?

「……妾に言い寄る大人の男を、どう思う?」

「「「「 …………うわぁ 」」」」
 とってもカワイソウな人をみる眼に――リリーさんなんて目元を押さえてます……!
「……み?」「みゅ?」
 ウィルとリースが、『どういうこと?』って訊いてきましたが……。
「えっと……『親子みたいにみえる』?」
「――イリス、ウィル、リース。お主等には本当に癒されるのじゃ……」
「ふえっ? えっと……ありがとう?」
 とっても優しい眼で、頭を撫でられました。――なんででしょう?
「……とにかく、じゃ。地位の高い者ほど、大抵は外聞を気にする。よって我が家系に見合いを申し込める程の家柄の者は……妾を二度見してから『ごめんなさい』か、外聞・評判吹っ切って『大好物です、いただきます!』な輩のどちらかなのじゃ……」
「「「「「 ――くっ……! 」」」」」
 みんな涙を流しはじめました!?
「――そこで、なのじゃ。大人が妾に言い寄れば犯罪行為じゃが……外見年齢が同じくらいの少年と恋仲になり、大きくなってから婚姻するのは、むしろ美談じゃろ……?」
「……本当、世間の評判って理不尽よね……」
「実年齢考えると、むしろ叔母上の方が犯罪なんですけどね……」
 ――あんまりお話がわかりませんし、『どういう意味ですか?』って訊ける雰囲気でもないので……ウィルとリースを撫でています。

「妾だって……妾だってイチャラブしたいのじゃああああああッ!!」

 涙を流しながらの叫びは……。
 とってもキレイなあおい空の果てに、消えていきました。
 叫んだまま、山の上のほう――遠くのお空をみているランカちゃん。
 ……雰囲気が、とっても重たくなっています。
 なんとかお話を変えなければいけない気がします。
 なんのお話にしようかなって考えて――あ、そうですっ!

「ら、ランカちゃん! その服、とっても珍しい服だねっ!?」

 最初にランカちゃんをみたときに思ったことを、言ってみることにしました。
「――む? ああ、この『着物』のことじゃな。精霊殿で働く女はほとんど『着物』なのじゃが……たしかに、他の国では滅多にみないのじゃ」
 模様がキレイで、ドレスとは全然違う感じのヒラヒラで――とっても可愛いです♪
「――私は話には聞いていたんだけれど……たしかに綺麗ね。でもコレを……その、精霊殿では御年を召した女性も……?」
「あ、いえ。叔母上が着ているのは少々変わり種の着物です。本来の物は丈が足首近くまでありますし、他に『戦巫女』が纏う『袴』や『道着』と呼ばれる物もあります」
「……リーゼおねえちゃんの髪、ランカおねえちゃんとおなじ黒だから、とってもにあいそうなきがする……?」
「そう? ありがと♪ でもアリアちゃんたちも、凄く似合いそうだと思うよ?」
「みゅぅっ?」
 よかったです! みんなの意識が『着物』に行ってくれました。リースは……着物より、ランカちゃんの髪飾りが気になってるみたいです?
 そんなわたしたちをみてから、ランカちゃんは『にこっ』って笑って。
「ならば――どうじゃ、イリス、リーゼ、アリア。……着てみるか?」
「「「 ――え? 」」」
 戸惑うわたしたちの前で。ランカちゃんが指輪を出して、指にはめて――あれ? あの指輪、どこかで……?
「――妾の着替えで、いっぱい持ってきているのじゃ♪」
 そう言いながら、どこからか大きな箱を取り出しました!?
「――なっ『永遠の牢獄』!? 精霊殿にもあったの!?」
 おかあさんの驚いた声で思い出しました! レミリアさんが持っていた、教皇家に伝わる家宝で――たくさん荷物をいれられる、便利な指輪です!
「うむ♪ 確か――八百年くらい前に、遺跡から見つかったのじゃ。教皇のレミリアも知っておるぞ?」
 ……八百年前の話を実体験で話せるのが、さすが1200歳です。
 ちょっと引いているわたしたちを気にせず、ランカちゃんは箱を開けて。
「――ほれ。柄も生地も、いろいろあるのじゃ♪」
「「「 わぁっ……! 」」」
 しろ、くろ、あか、ピンク、あお――布もいろんな色があって、模様もおとなしい感じのからキラキラのまでいっぱいあって、とってもキレイです!
「そして、こうすれば――ここで着てみる事も出来るのじゃ!」
 言いながらランカちゃんは――闇聖術、でしょうか。くろい影を作りあげて――それはどんどん大きくなって、お部屋くらいの大きさになりました。
「無詠唱でこの規模……しかも、こんなに安定してる……」
 ……おとうさんも、たしか『光も闇も実体が無いから、聖術も闇聖術も、発動より安定させる事の方が難しい』って言ってたので、とってもスゴイんだと思います。
「ふっふっふ。千年以上の研鑽を積んでおる。昨日今日使える様になったばかりの者に負ける気など、さらさら無いのじゃ♪ ――さぁ、好きなものを選んだら、ここで着替えるといいのじゃっ!」
 とっても驚くリーゼちゃんに、とっても得意気にランカちゃんが言いました。
「ありがとうございますっ♪ ――じゃあお着替えに行こっ」
「うんっ♪」「んっ♪」「――あ。では私が着付けをしますね?」
 とっても楽しそうに応えてくれた、リーゼちゃんとアリアちゃん。
 そしてリリーさんが、お着替えを手伝ってくれるそうです!
 カワイイ服が着れることと――それ以上に、カワイイ服を着たリーゼちゃんとアリアちゃんをみるのが、とっても楽しみです♪
「……ときにエリルよ――中、見たくはないか?」
 着替えはじめて、ちょっと経ったころ。外から聞こえてきました。
「……メンバー、男が俺とウィルだけって事に気付いた時点で、なんで兄ちゃんたちと帰らなかったんだろうって後悔してたよ……!」
 からかう感じのランカちゃんの声に……とっても苦悩している感じのエリル君の声。
「――ふむふむ、男の子じゃのう……。で、見たくはないか?」
「み、見ないっ……!!」
「ふむ、流石は聖殿騎士の弟子なのじゃ。――でも衣擦れの音は聞こえるであろ?」
「なんで兄ちゃんたちと帰らなかったんだろう……ッ!!」
 ……エリル君がからかわれているみたいですが――今はお着替え優先ですっ。

「お着替えおわったよ~っ!」
 三人とも着替えがおわったので、外に声をかけました♪
 おかあさんとエリルくん、それにランカちゃんの反応が楽しみです!
「あ、あの……リリーさん? これ、大丈夫ですか……?」
「えっと――間違いなく、とても可愛いですよ? ……少し、ギリギリですが」
 リーゼちゃんが、ちょっと恥ずかしがっています。
 とってもカワイイですし……『ソレ』も、走らなければ大丈夫だと思うのですが……?
「じゃあ、みんなで出よっ♪」
「ん」「う、うん……っ」
 わたしが言うと、いつものお顔でうなずいてくれたアリアちゃんと、ちょっと恥ずかしそうにうなずくリーゼちゃん。
 そんな二人と手をつないで、外にでましたっ!

「――わぁ! みんな、とっても素敵じゃない! アリア、その髪型もいいわね♪」
「みぎゃっ! みぎゃあっ♪」
「……ん。えっと……ありがと」
 ちょっぴり恥ずかしそうに言ったアリアちゃんが着ているのは、くろい着物にお花の模様がはいっているものです。
 髪も、頭の後ろで一まとめにしています。
 ちょっと大人っぽい感じですが、普段はおとなしい感じのアリアちゃんにはとっても似合っていますし、ちょっとだけサイズが大き目なのが、むしろ可愛いです!

 わたしの着物はピンク色で、しろいお花の模様に、帯はくろです!
 ピンク色はとっても好きな色ですし、袖のところのヒラヒラがおもしろいし、とってもカワイイです♪
「イリスは何というか……直球で可愛いわね。ドレスだと大人しい印象になるけど――こっちだと元気いっぱいな可愛らしさというか」
「ん。おねえちゃん、とってもかわいい……♪ だけど裾、きをつけて……」
「ふむふむ、サイズもピッタリじゃな。誂えた様に似合っているのじゃ!」

「みゅう! みゅうぅっ♪」
 リースに飛びつかれて『おかあさん! とってもキレイ♪』って言われて恥ずかしそうなリーゼちゃんは――しろい布に、大きなお花の模様がはいった着物です。
 キレイなくろい髪のリーゼちゃんに、とっても似合っていて――抱っこしたリースも含めて、とってもカワイイです♪
 後ろでまとめた髪も新鮮ですし――ちょっと丈が短いですが、そこも色っぽいです!
「――リーゼよ、お主、意外と胸があるのじゃな……」
「あ、あー……ただでさえランカより背が高い所に、胸の分で押し上げられて――ギリギリの丈になってるのね……? でも、それも込みでもの凄く似合ってるのよね……」
「――ん。リーゼおねえちゃん……かわいいっていうか、とってもキレイ」
「あ、その……ありがとう。えっと……エリル君。どう、かな……?」
 お顔がまっかで、裾を押さえて『もじもじ』しているリーゼちゃん、カワイイです♪
「――兄ちゃんたちと一緒に帰らないで、本当に良かった……! 何て言ったらいいか……すごくキレイだ、リーゼ……!」
「あ、ありがとう、エリル君……っ!」
 そう言って見つめあって――ちょっと、まわりの声は聞こえそうにない感じです?
「うむ。二人だけの世界に入ってしまったので、今回はこれでお開きじゃな。――して、イリス、アリア。着物の着心地はどうじゃった?」
「うんっ! とってもカワイイし、着心地もとってもいいよ♪ ――あ、でも」
 実は……ちょっと帯で、気になっていることがあるんです。
「――あっ、おねえちゃん、それ、いっちゃダメ――」

「――帯が、ちょっと長すぎると思うのっ」

「ぐはぁッ……!?」
 ……あ、あれ? ランカちゃんが、胸を押さえて倒れてしまいました!?
「あ、あー……。帯が長いって、本来の持ち主のお腹周りが――って事かしら……?」
「……ん。リーゼおねえちゃんでも、かなりあまってたから……たぶん」
「叔母上……ほとんど老いないとはいえ、不摂生は止めなさいと言われていたではないですか……見えない所に、いろいろ余分なモノが付くのですから……」
「……お主は目立つ所に余分なモノが付いて、羨ましい限りじゃの、リリーよ」
「――大きなお世話です。……どうにかしなさい、その『千二百年の弛み』」
「『弛み』言うなあああああああッ!?」

 みんな落ち着いたところで――イグニーズの街に戻ることになりました。
「それで――叔母上? これからどうするおつもりですか?」
「……少し街をブラついて、食べ歩きをしたかったのじゃが――そんな気分ではなくなってしまったのじゃ……」
 ランカちゃんは、なんだかとっても落ち込んだ顔で――みんなは、ちょっぴり気の毒そうな眼を向けています。
「――うむ。ならばお主等には隠す必要も無いようじゃし、本来の目的に向かう事にするのじゃ! ……この街の戦力と、その練度を見たい。冒険者たちが集まる所と、自警団の詰め所に連れて行ってほしいのじゃ」
 気を取り直して――真面目な顔で、ランカちゃんが言いました。
「……ある程度の予想はついていましたが、相当に面倒な事になりそうなのですね?」
「――うむ。リリーよ、お主がこの街の自警団の長を務めていた事、本当に僥倖(ぎょうこう)だと思っておる。お主なら多少、奴らの遣り口を知っておるからの」
「……そういう敵ですか」
 なんとなく、予想はしていましたが……敵が来る、ということでしょうか。
 しかも、『奴ら』と言っているという事は、魔物ではなくて――
「……後でカリアスやレミリアと一緒に聞く事になると思うけど――敵は『人』なのね? 大地母神教の過激派、といったところかしら?」
「……当りなのじゃ、フィアナ。――イリス、アリア、エリルと……リーゼよ。覚悟をしておくがいい。強大な魔物より、矮小(わいしょう)なれど狡猾な人間の方が遥かにタチが悪い」
 真面目で重い――本当の『巫女長』の顔で言うランカちゃん。
「――まぁ、とはいえ、まだ時間はあるのじゃ! 向こうも人なら、こちらも人。タチの悪さでの勝負なら、妾が負けるわけがないのじゃ。くっくっく……!」
 わたしたちを気遣って、わざと明るく言ってくれているみたいです。
 ランカちゃんは、とっても悪そうな顔で笑ったあと、わたしたちの方を向いて。
「――お主等にも期待しておるぞ? ……我が友たちよ」
 イジワルそうに笑って言うランカちゃんに――わたしたちの答えは、決まっています。

「「「「 ――はいっ……! 」」」」

 ……たとえ相手が人だろうと――戦います。



   ◆◆◆次回更新は8月25日(金)予定です◆◆◆

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