『-船上の復讐者たち-』 ◇エピローグ

作者:子子子子 子子子

◇エピローグ
(※今回は第7話『◇6 ××××』と合わせて2話分の更新になりますので、そちらからお読みください)


 数日後。
 予定よりも数日遅れて合衆国へ入国した晴栄(はるな)は、とある喫茶店で新聞を読んでいた。

 新聞記事の見出しには、除籍処分をされた軍人が軍艦など軍の備品を盗みだし海賊(まが)いの犯罪行為をしていたが、とある東洋人の兄妹によって制圧されたという記事が大々的に掲載されていた。

 なお、その兄妹は搭乗していた旅客船<トラキア>が目的地に到着すると同時に忽然(こつぜん)と姿を消していて、それが逆に神秘的な出来事だと話題を呼んでいた。

「…………」

 その張本人である陰陽寮所属陰陽師・土御門晴栄は苦々しい顔でコーヒーを飲んでいた。

 目立つことを嫌って上陸と同時に姿を隠したが、もはや痕跡を隠すには程遠い。
 そもそも、大勢の前で大立ち回りをした以上、隠し通せるはずもない。
 これもすべてレオ・タクシルのせいだ、と結論づけてなるべく早く忘れることにした。

「まったく、とんだ災難に遭ったものだ……」

 ため息を吐くと、新聞を折り畳んで会計を済ませる。
 合衆国へとやって来た今、()(ろう)(まる)を呼び出して疑似兄妹の芝居に興じる必要もない。
 そう考えると、いくらかは気楽であるとも言えた。

 新聞の記事にはローゼンやレオ・タクシルの名前は載っていなかった。
 レオの件は隠蔽(いんぺい)主義の魔術師たちがもみ消したのだろうし、ローゼンは逃げたにせよ自首したにせよその安否を晴栄が知る術はない。
 しかし――ただ漠然とだが、彼女は妹の元に帰ったのだろうと確信めいた予感があった。

「さて、それでは僕も向かうとするか」

 晴栄は地図を取り出して、これから向かう目的地を確認する。
 遠路遙々(えんろはるばる)、この合衆国まで訪れた理由。

 それこそが――

「セイレム魔女学園。現代魔女術(ウィッチクラフト)の最高学府にして、唯一無二の学術機関」

 魔女たちの園(スクール・オブ・ウィッカ)――セイレム魔女学園。
 かつて起きた歴史的冤罪事件『セイレム魔女裁判』。
 その舞台となったこの場所に、その学舎は存在する。
 大和皇国の陰陽道と同様に、独自発展を遂げた特異な魔術体系。
 それこそが現代魔女術。

 晴栄はこの学園に留学するため、遠路はるばる極東の島国からやってきたのだった。

「なあ、ローゼン。お前も僕も、大して変わりはないさ」

 そう呟くと、戦場で出会った復讐者の少女に思いを馳せる。
 見る人によっては、たった一人で部族の仇を取ろうとした彼女を愚かと断するかもしれない。

 しかし、晴栄にとっても、それは同じことである。
 復讐こそが人生の全てであり、それ以外のことは些細な問題なのだ。

「僕は土御門の家に復讐を果たす――ただ、それだけだ」

 こうして、胸に揺らぐことのない野望を抱いて、晴栄は歩き出す。
 船上の復讐者は大地へと立ち、次なる目的へと向けて進んでいく。
 己が胸に宿った目的――復讐を()げるまで、その歩みを決して止めることはない。


『魔術破りのリベンジ・マギア』前日譚 「船上の復讐者たち」 了


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