◇エピローグ 親愛なる友へ

作者:子子子子 子子子

◇エピローグ 親愛なる友へ



 ――四年後――

 ――合衆国ニューイングランド地方マサチューセッツ州ダンバース――

 ――セイレム魔女学園、シナトラの演奏室にて――


「さて――これでよし、っと」

 ルーナサーから数日後、あの祭宴(サバト)の余韻も納まった頃。
 シナトラは机に向かって、手紙をしたためていた。

晴栄(はるな)とティチュが来るまでと思って書き始めたが、思いの外に筆が乗って書き終えてしまった。

「あ、この〝音〟は――ナイスタイミングだね!」

 ちょうどそのタイミングで、シナトラの耳には馴染みのある音が聞こえてくる。
 それが待ち人が訪れる合図だと知っているシナトラは、嬉しそうに表情を綻ばせた。

「邪魔するぞ、シナトラ」

「シナトラさん、こんにちはっ」

 やがてドアが開くと、二人の客人が部屋に入ってくる。
 片や腰元まで伸ばされた黒髪が美しい東洋人と、片や浅黒い肌と亜麻色の髪が魅力的な生徒。
 即ち、土御門(つちみかど)晴栄(はるな)とティチュ・マレフィキウムはシナトラの友人であり、今日は以前から約束していた検査をするためにこの部屋を訪れたのだ。

「やあ、二人とも。待ってたよ!」

 シナトラは満面の笑みを浮かべて、二人の友人を出迎える。
 しかし、シナトラが片手に持った手紙が目に入り、ティチュは小首を傾げた。

「それは……手紙、ですか?」

「うん、故郷の友達にね」

「そうなんですね~! シナトラさんは、どんな手紙を送ってるんですか?」

「いつもは近況報告とかだけど……今回はちょっと特別、かな」

 ティチュの問いに対しても、シナトラはにこやかに答える。
 魔女学園に入学してからも、こうしてシナトラは定期的に手紙を送っていた。
 いつもならばただの近況報告であるが、今回は少し特別だった。

「ボクにも魔女学園(ここ)で友達ができたって――そう書いたんだ」

「そ、そうか……まあ、結構なことだ」

 シナトラは照れ笑いを浮かべると、気恥ずかしそうに言葉を続ける。
 そして、ちらりと晴栄に視線を向けると、彼もまた同じように気恥ずかしげに頬を掻いた。
 
「その方はシナトラにとって、大切な方なんですね」

 ティチュはシナトラの言葉を微笑ましそうに聞いていると。ティチュは自分まで嬉しそうに笑う。
 自分にとっての喜びを綴る手紙を送るということは、その気持ちを伝えたい相手であるとティチュは知っている。

「うん――とっても大切で、自慢の友達たちなんだ」

 ティチュに問われると、シナトラは満面の笑みを浮かべる。
 遠く離れていても心を通わせ合う仲間に向けられた笑顔は、雲一つない青空を思わせる晴れ晴れとした笑顔だった。



〈了〉

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