第25編 『緊急取材!! 青騎士伝説の真実に迫る!?』 シーン03

作者:健速

シーン03 火竜帝、取材を受ける



 ナルファから解放されたクランは、埴輪(はにわ)達と一緒にラジコンパーツの製作を始めた。先程のシャフト以外にも、クランには自分のラジコンに改造したい部分があったのだ。

『クランちゃんは何を作るホ?』
「軸受けのベアリングですわ。先日車体が跳ねた時、内部の金属球が歪んだ様ですの」

 クランはゴマよりも小さな金属球を沢山作っていた。その中から真球に近いものを選び出し、小さなボールベアリングを作ろうというのだ。これにより車輪を回転させる軸のガタつきがなくなり、エネルギーの損失が減る。手をかけておいて損はない部分だった。

「これだけあれば四つ分にはなりますわね………よし」

 クランは加工が済んだ金属球が沢山入った容器を手に測定機へ向かう。するとそんなクランをコラマが呼び止めた。

『クランちゃんクランちゃん、怪獣のおじさんの尻尾が光っているホ』
「尻尾が光ってる? どういう事ですの?」
『あれを見て欲しいホー』
「あら、本当ですわ」

 クランがコラマの言葉に従ってアルゥナイアを見ると、確かにその尻尾が光っていた。アルゥナイアはクラン達に背中を向けるような形でインタビューを受けているのだが、その尻尾の先端がチカチカと光っている。多分、ナルファからは見えていないだろう。

「んー………あの光り方、パターンがありそうですわね。記録して解析してみていただけませんこと?」

 一見不規則に光っているように見えるのだが、クランはそこに何か意味があるのではないかと直感した。

『分かったホー!』
『解析開始だホー!』

 埴輪達も気になっていたので異存はない。直ちにデータの解析を開始した。幸い解析はほんの数秒で終わった。

『クランちゃん、出来たホー!』
『ちょっと間違ってるモールス信号だったホー!』
「内容は?」
『怪獣のおじさんは“タスケチ コウジョドンカ”って繰り返し言ってるホ』
「ふむ………それは多分“助けて皇女殿下”ですわね………」

 光の点滅はSOSの信号だった。アルゥナイアはインタビューを受けながら、何処かで仕入れたモールス信号の知識を使ってクランに助けを求めていたのだ。

『怪獣のおじさんが助けを求めているホ!』
『クランちゃん、助けてあげて欲しいホ!』
「そう言われましても………どう助ければ良いんですの?」
『言われてみればそうだホ。ナルちゃんを止めさせるのも可哀想だホ』
『………怪獣のおじさんの信号が変わったホ。“オニ アクマ インケン”』
「………放っておきましょう」

 気にしている事を言われてムッとしたクランはSOSの信号を無視する事にした。クランはそのまま測定機に向かう。

『………』
『………』

 二体の埴輪は顔を見合わせてしばらく考え込んだ後、結局はクランについていった。アルゥナイアも陰険だけは言わない方が良かったんじゃないか、そんな事を思いながら。



 当初はナルファに圧倒されるばかりだったのだが、時間が経つにつれてアルゥナイアは徐々に調子を取り戻していった。アルゥナイアが圧倒されていたのは、単に竜族には存在しないインタビューというものに困惑していただけだったのだ。またクランとは違って、アルゥナイアには隠さなければいけない事がない。インタビューそのものに慣れてしまえば、そこからは別段困るような事は無かった。

「………つまりコータロー様の手の甲に刻まれた紋章は、この時代と場所へ移動してくる為の目印だったという事ですね?」
『そうだ。といってもやはり遠くて身体ごとは来れんでな、魔力の一部と意識のコピーだけでの来訪となった。気が済んだら帰って本体に統合される』
「それでその可愛らしいお姿をしている訳ですね。続いて、現代への来訪の目的をお訊きしても宜しいでしょうか?」
『特にない。強いて言えば、友人にはたまに会いたかったというぐらいだ』
「結果的にコータロー様はピンチの時にアルゥナイア様を呼んだ訳ですが」
『それはそれで構わない。死んでから会うのは難しいし、危機に儂を頼ってくれたというのは誇らしくもある。真の友とはそういうものだろう?』
「仰る通りです! 流石は灼熱の大帝!」
『だろう~?』

 インタビューが始まって一時間が過ぎる頃には、アルゥナイアは既に普段通りに話していた。竜族は一人暮らしが普通なので、会話の経験が少なく苦手なのが大半だが、アルゥナイアの場合は地球に来て大分経っているのでそういう心配はない。毎日の静香とのお喋りでかなり鍛えられているのだった。

『そうだ、これを知っているか娘よ? 二千年前の話なのだが』
「何ですか?」
『実は二千年前の世界では、青騎士はクラン皇女の下着を洗濯しておったのだ』

 調子が出て来たアルゥナイアは、ここでクランの暴露話を始めた。アルゥナイアも大人なので、普段ならそんな事はしなかったかもしれない。だが先程SOSを無視された事がそうさせた。加えてこれには最近のクランとの関係の変化も影響している。つまりこれは友達だからこその悪戯と、ちょっとした仕返しが混じり合った行為だった。

「それは本当ですかぁっ!?」

 ナルファはきらきらと目を輝かせると、素早くクランの方へカメラを向ける。青騎士に下着を洗わせた皇女など、後にも先にもクランただ一人。それはインタビューから飛び出した思わぬビッグニュースだった。

「いっ、忙しかったからですわっ! わたくしが作業だけに集中できるよう、あの男が自分からやってくれていたのですわっ!」

 カメラの中でクランの姿が大きくなる。クランは大慌てでナルファに駆け寄ると、わざとではなく成り行きでそうなっただけだと声高に主張した。これは降って湧いた皇女としての立場の危機だった。

『というのが表向きの理由だ。本当は面倒で押し付けていたのだ』
「違いますっ、違いますわぁっ!!」

 正直なところ、アルゥナイアの言葉は事実だった。初期の頃、まだ感情的なしこりが残っている頃にそういう事があったのだ。だがクランが孝太郎(こうたろう)を仲間だと思うようになってからはそういう事は無くなった。そしてその頃には確かに、孝太郎もクランの様子を見て自発的に洗濯してくれる事が少なくなかった。つまり前半はアルゥナイアの主張が正しく、後半はクランの主張が正しい。どっちも正しい厄介な話題だった。

『それにずっと前から習い事をサボっていたから、非常時にもかかわらず、食事の世話も全て青騎士に頼り切りだったのだ』
「そっ、そうなんですかっ!? 凄い度胸をお持ちですねっ!?」
「ちっ、ちがっ、ですからわたくしは忙しかったんですわぁっ!!」

 下着問題や料理問題を皮切りに、アルゥナイアの暴露話はしばらく続いた。その全てが事実、あるいは事実の側面であった為に、一つ一つがクランの心に大きなダメージを与えていった。

『………という訳でな、クラン皇女は渋々、内密に料理の修行を始めたのだ』
「はうぅ、あうあぁぁぁ~~~」

 しかも相手は宇宙最強生物と名高い真竜の王。まともに反論出来ず、しかも止める事も出来ない、クランにとっては地獄のような状況が続いていた。

 ―――このクラン殿下のご様子からすると、アルゥナイア様の話は全部本当なんだろうなぁ………コータロー様を侍従扱いだなんて、クラン様勇気あるなぁ………。

 ナルファはそんなクランを撮影しながら、驚き半分、尊敬半分の視線を送っていた。そもそも青騎士にそうした雑事をやらせた事も驚きなら、それが可能な関係というのも驚きだ。一人の女の子としては、そんな事を青騎士にさせたら死にたくなる。皇女としてもそれで青騎士との関係がこじれれば大問題だろう。何をどうしたらそんな事が可能なのか、教えて欲しいナルファだった。

『ナルちゃん、おいら達もクランちゃんのヒミツを知っているホ!』
『おいら達を撮影してくれるなら全部教えるホ!』
「しますします! 教えて下さい!」
「や~~~め~~~て~~~!!」

 クランの真の試練はここからだった。アルゥナイアはそれでも、主に孝太郎とクランが手を組んだあたりからの情報しか持っていなかった。だが埴輪達はそうではない。彼らは一番最初、クランがティアを襲った時からの情報を握っていた。

『クランちゃんは最初、大きいブラザーを原始人と呼んでいたホ!』
『それに大きいブラザー殺そうとして返り討ちに遭ったホ!』
「まっ、まっ、まっ、まさかぁっ、あ、青騎士閣下をですかぁっ!? しかもっ、ころそうとしたぁっ!? いったいどういう状況だったんですかぁっ!?」
「い~~~~~~や~~~~~~!!」

 無論、埴輪達が握っている情報は一つや二つではない。こうしてパンドラの箱は開かれ、クランが懸命になって隠して来た恥部は全て解き放たれたのだった。



   ◆◆◆次回更新は2月22日(金)予定です◆◆◆

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