13巻Twitterキャンペーン 目標達成特典ショートストーリー その1
『夜のご奉仕だよ』
場所はガルアーク王国の王都近郊。これは夜会の後、リオがセリアを実家があるクレイアへ送り届ける前の話である。
「リオ、まだ起きているかしら?」
就寝前、通路を歩くセリア。向かう先はリオがいる部屋だ。部屋の近くにたどり着くと、扉がわずかに開いているのが見える。
「ねえ、春人、気持ちいい?」
アイシアの声が聞こえてきたのはその時だ。
(まさかアイシア、実体化してリオと寝ようとしているんじゃないでしょうね?)
ハッと危機感を覚えるセリア。すると――、
「う、アイシア。そこは……」
リオのうめき声が聞こえてきた。セリアはなぜかドキッとして硬直する。
「気持ちよくない?」
「いや、ちょっと気持ちよすぎて。もう少し手の力を抜いてくれると……」
「こう?」
「そ、そう。くっ、ああっ……」
リオの苦しそうな声が響いてくる。
(な、何をやっているの……?)
セリアはごくりと固唾を呑む。
「痛い?」
「痛くはないよ。絶妙な力加減だ。そのまま続けてくれる?」
「わかった。もう少し手の動きを速くしてみる」
「うっ……、いいね。すごく気持ちいいよ」
リオのうっとりするような声が聞こえてきた。
(気持ちいいって何が!?)
心の中で突っ込むセリア。扉に手を伸ばして開けるべきか、開けないべきか、いや、そもそもバレる前に立ち去った方がいいんじゃないのか。そんなふうに逡巡して後ろを振り返ると――、
「って、あ、貴方達、いつの間に!?」
そこにはラティーファと美春、サラとオーフィアとアルマがそっと忍び立っていた。みんなでそっと聞き耳を立てている。
「しーっ、だよ。セリアさん!」
ラティーファが慌ててセリアの口を押さえた。しかし、もう遅い。
「……誰か部屋の外にいます?」
リオが部屋の外に向けて問いかけた。
「も、もう、こうなったら仕方がないわ!」
セリアは半ば自棄になったように、部屋の扉を勢いよく開いた。ラティーファや美春達の視線も室内に吸い寄せられる。そんな彼女達の視界に飛び込んできたのは――、
「……な、何をしているの?」
寝間着姿でうつ伏せになったリオの腰に跨がるアイシアの姿だった。
「春人にマッサージしてあげているの。夜会でお疲れだから」
アイシアがきょとんとした顔で答える。
「そ、そういうこと……」
思わず脱力してしまうセリア。すぐ後ろに立つ美春やサラ達もほっと息をついている。その一方で――、
「ずるーい! 私もお兄ちゃんにマッサージをしてご奉仕するの!」
勢いよく部屋に飛び込むラティーファ。その後は日頃の感謝を伝えるべく、みんなで仲良くリオにマッサージをすることになったのだった。
(了)